加藤が最初に中華人民共和国を訪れたのは1971年9月から10月にかけてのことである。文化大革命が進行していた時期であり、紅衛兵が活発に活動していた。本ノートは中国訪問時に購入もしくは譲渡されたものだろう。冒頭には毛沢東の写真が載っている。そして訪れた土地(広州、北京、西安、大慶など)で見たこと聞いたことに関するメモが綴られる。そこには、人に会って聞いた話の内容に関するメモ、台湾独立や米中問題などの政治状況から中国病院における針麻酔見学まで、あるいは中国経済から日中商談に至るまでのメモが記されている。これらのメモは『中国往還』(中央公論社、1972)のいくつかの論考に活かされている。