本ノートは「徳川時代・儒」と名づけられた『日本文学史序説』に関連するノートである。普通、「儒教」は思想史が扱う領域であるが、加藤の文学史研究は、精神史研究でもあり、徳川時代を理解するうえで儒教は不可欠の問題として位置づけられる。儒教、ことに朱子学の「理」や「天」といった基本概念を儒学者がどのように理解していたか、そして外来の儒教と日本の神道とをどのように折り合いをつけていたのか、という問題意識を加藤が持っていたことがわかる。本ノートに採りあげられる思想家は、山本常朝、荻生徂徠、山片蟠桃、三浦梅園、石田梅岩、熊沢蕃山、山鹿素行、伊藤仁斎、頼山陽などである。いずれも通常の日本文学史では言及されない人たちである。