本ノートは『日本文学史序説』に結実していくノートである。「国学」と名づけられるノートだが、その内容の大半は本居宣長に充てられる。宣長の伝記的事実を年表に表し、代表作を抜き書きし、註釈がつけられる。採りあげる著作は『答問録』『古事記伝』『直毘霊』『石上私淑言』『源氏物語玉の小櫛』『秘本玉くしげ』『詞の玉緒』『あしわけをぶね』『玉勝間』、そして「遺言書」などである。宣長に関する加藤の最大の関心は、『古事記伝』に代表される精密な文学研究と、イデオローグとしての粗雑な議論とが、同一人物の中で両立していたこと、および死に当たっては神仏二つの流儀で葬送を行うことを細かく指示したことに注がれる。宣長以外では、賀茂真淵、契沖などに関するノートが綴られている。