章題から分かるように永井荷風について記されたノートである。1960年安保闘争の日々から、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学に赴任したころにかけて採られたノートであるが、本ノートを基にして「物と人間と社会――荷風という現象」(『世界』1960年6月号~1961年1月号)が書かれた。連載時期との関係から類推すれば大半は日本で採られたと考えられる。加藤には荷風論がいくつかあるが、その代表的な論考である。本ノートは、「日記抜粋」「断腸亭日乗:読書」「荷風の女」〈Ce que Kafu hérite〉 〈l’amour chez Kafu〉などがある。ノートは日本語、フランス語、英語を使って書かれている。末尾に『世界』連載の切抜き(非デジタル化)が付される。