本ノートは「日本文学史序説下」となってはいるが、扱われる時代は中世から近世末期までにかけてであり、採られた「ノート」の内容もかなり多岐にわたる。能・狂言に始まり、鎌倉仏教や禅宗とその世俗化、「本歌取り」などにも触れるが、江戸時代の文学者に関する記述が大半を占める。加藤の文学概念は広く、新井白石、荻生徂徠から福沢諭吉、中江兆民までが視野に収められている。一方、俳諧や川柳、歌舞伎、そのなかでも「忠臣蔵」に関する叙述も見られる。加藤の基本的方法である「年表作成」もふんだんに使われている。『日本文学史序説』第7章「元禄文化」、第8章「町人の時代」、第9章「第四の転換期上」執筆のためのノートだったろう。