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目録ID ku004011
タイトル. 版. 巻次 帰らぬ魚
タイトル. 版. 巻次(カナ)
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花溢れゐき
帰らぬ魚
噴水に濡るる塑像をふり仰ぐするどき骨をわが身に持ちて
うす青き切符一枚幼な子のレースの胸のポケットに見ゆ
雨のなかに花咲ける日は短くて合歓の葉末の早く衰ふ
降りしきる落ち葉のなかに人のゐて螺旋の階を白々と塗る
少年の鼓笛隊遠く野を行けり取り残さるる打楽器の音
あは雪を降らせてゐるはたれならむ声をひそめて人の行きかふ
日だまりにつなぐ仔犬をかまひゆく卵を売りに来るをとめらも
傘のなかに見知らぬわれの歩みゐる雨にまじりて木の実降る道
方角を占はれゐる椅子の上まぶた閉ぢてもいづこも寒し
秋の夜の炭火匂ひて人の名を灰文字に書くかなしみも過ぐ
ひとりでに鳴るオルガンも古りたらむ風の夜は思ふ山の校舎を
山茶花の咲く日となりて傷つける青のインコも癒えてゆくらし
こだはりを持ち歩く身と気づきたりポケットの右手汗ばみてゆく
硝煙の匂ひか遠くよみがへる枯れ葉を飾るほかなき空に
シリウスを仰ぎて来しが揺れやまぬ木々いつまでも眼裏に見ゆ
くたくたになりて目ざめぬ群衆のなかに一つの顔を探しゐき
顴骨の高くなりたるわれの顔鏡の奥にも雨は降りつつ
とどまらぬ雲の流れを仰ぎゐて耳のうしろのさわだちやすし
何事か拒まむとしてバスのなかに次第に激しゆく指話のさま
ぬかるみをよけし刹那につまづきて工事場のライトしたたかに浴ぶ
体温を計られて来て危ふきに水に沈めるスプーン輝く
耳鳴りの残るは寂しわが髪に黄蜂むらがる夢より醒めて
キヌバリと呼ばるる魚のすきとほり何のけはひに身をひるがへす
水槽の藻のあたりより暗くなる部屋と思ひて身じろがずゐる
むらがりて岩をめぐれる魚のなか脱けて帰らぬ鮒などあるや
嗅覚の鋭くなりて野を行けり霧の向ふに牛の声湧く
道に会ひ連れだちて帰る妹のいだく荷のなかセロリが匂ふ
雨にけむる海見ゆる窓色褪せし紙の桜をいつまでか吊る
花鋏探しに出でて地にかがみそのまま草を抜きはじめたり
幼な子と歩幅あはせてあゆむさま遠く見しより憎まずなりぬ
四方より乾きてはだらなす壁にまた降り出づる夜の雨の音
眠られぬ夜々に思へばみづからの羽根抜きて紡ぐよろこびも無し