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さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―
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全短歌(10791首)(資料グループ)
ふたたびわれは(目録)
/ 11652ページ
目録ID
ku005011
タイトル. 版. 巻次
ふたたびわれは
タイトル. 版. 巻次(カナ)
タイトル. 版. 巻次(ローマ字)
タイトル関連
雲の地図
タイトル関連(カナ)
タイトル関連(ローマ字)
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デジタル化の経緯に関する注記
/ 11652ページ
関連目録
雲の地図
ふたたびわれは
複眼を光らせて虫の飛び立てりわれには見えぬもの多からむ
傾けてさすとき不意に五体まで透けて見ゆるやうなビニールの傘
いちめんに卯の花などの咲きてゐる感じにあはき朝の眠りよ
知る筈のなき人ながら指先を脂いろに染めて死すと伝ふる
魚眼レンズに覗ける街の夕闇に続けり声を洩らさぬ会話
いづこにか生きながらへて沈みさうに歪む屋根など今もゑがくや
満たしたる水に洗剤を振り入れて儀式のごとしかき回しつつ
聞きてはならぬ言葉を誘ひ出さむとしふたたびわれは思ひとどまる
水の輪のかさなりあひてつかのまに木蔭の椅子も濡れはじめたり
駅までを連れだちてゐて身の左庇はれて歩むことのやさしさ
振り向かるることをかすかにたのみゐてもろ手汗ばむマントのなかに
幼な子を呼びてはげしき母のこゑはげしく何を呼ぶことありや
回り道したるを悔やむことなくて吊り橋の上にしばらく憩ふ
人参をそぎゐる夢に現れし顔に見られて一日ありたり
動くともなくただ薄く運命のかげりのやうな雲が見えゐる
白鳥のプリマ追ひゆく円光のなかを影なる部分も走る
夜の雪を漕ぎ来しブーツ脱がむとし何か失ふごとき怖れよ
たどり得る限りの経緯さかのぼりつきとめがたし陰画のゆくへは
八方をふさがむとしていつまでか道のバラスを敷き均らす音
棕櫚の葉の苦しきばかり鳴る夜なり地の果てまでも行かむと告げよ
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雲の地図
ふたたびわれは
複眼を光らせて虫の飛び立てりわれには見えぬもの多からむ
傾けてさすとき不意に五体まで透けて見ゆるやうなビニールの傘
いちめんに卯の花などの咲きてゐる感じにあはき朝の眠りよ
知る筈のなき人ながら指先を脂いろに染めて死すと伝ふる
魚眼レンズに覗ける街の夕闇に続けり声を洩らさぬ会話
いづこにか生きながらへて沈みさうに歪む屋根など今もゑがくや
満たしたる水に洗剤を振り入れて儀式のごとしかき回しつつ
聞きてはならぬ言葉を誘ひ出さむとしふたたびわれは思ひとどまる
水の輪のかさなりあひてつかのまに木蔭の椅子も濡れはじめたり
駅までを連れだちてゐて身の左庇はれて歩むことのやさしさ
振り向かるることをかすかにたのみゐてもろ手汗ばむマントのなかに
幼な子を呼びてはげしき母のこゑはげしく何を呼ぶことありや
回り道したるを悔やむことなくて吊り橋の上にしばらく憩ふ
人参をそぎゐる夢に現れし顔に見られて一日ありたり
動くともなくただ薄く運命のかげりのやうな雲が見えゐる
白鳥のプリマ追ひゆく円光のなかを影なる部分も走る
夜の雪を漕ぎ来しブーツ脱がむとし何か失ふごとき怖れよ
たどり得る限りの経緯さかのぼりつきとめがたし陰画のゆくへは
八方をふさがむとしていつまでか道のバラスを敷き均らす音
棕櫚の葉の苦しきばかり鳴る夜なり地の果てまでも行かむと告げよ