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さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―
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全短歌(10791首)(資料グループ)
身を責めて(目録)
/ 11652ページ
目録ID
ku005036
タイトル. 版. 巻次
身を責めて
タイトル. 版. 巻次(カナ)
タイトル. 版. 巻次(ローマ字)
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雲の地図
タイトル関連(カナ)
タイトル関連(ローマ字)
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/ 11652ページ
関連目録
雲の地図
身を責めて
いつの日の海とも知れず現るる水平線はつねに目の高さ
ついばみて足もとにゐし鳩一羽ふとなまぐさし飛びたつときに
保つべき距離と思ふに鼓動などの木にも草にもあるごとき日よ
女にて竦む思ひの間々きざす人ごみのなかいま橋の上
わが知らぬ職種もあらむかたはらの一人は磁気のごときをまとふ
どのやうなかなしみをまた知るわれか胸濡らしつつ髪を洗へり
消しておくテレビに映りゆくりなく逆三角をなすもわが顔
みづからのこめかみ押して堪へむとす分別といふがよみがへりつつ
背後よりしづもる夜更け使ひたる鋏を置けば音はねかへる
さわがしく光を反しゐたる雪しみじみ白し夜の闇に見て
かなへられぬ願ひの一つ前面に踊りて出づる黒衣を待つは
眠り薬のきき出すころか胸の上に軟体となる十本の指
青みさす雪のあけぼのきぬぎぬのあはれといふも知らで終らむ
うす雲にまぎるるほどの残月と仰ぎしことも夢かも知れず
階段を昇りゆくときひざまづくかたちに椅子の見ゆる事務室
踊り場のガラスはいつも曇りゐて坂下の沼とけぢめのつかぬ
運といふたれにもつきまとふものならむ採点に根を詰めゐて思ふ
目の前が真紅に染みぬシクラメンを届けむといふ電話聞きつつ
すさみゐし午後と思ふにはかどれる仕事のことを人の言ひゆく
山の地図を柩に入れてやる見つつ死者になし得るなべてさびしき
告げやらむ人もあらねど喪の家の夜の賑はひを脱けて戻り来
花びらの反りて辛夷も過ぎむとす影の濃き日と思ひ仰げば
色の濃きプラム、無花果入り混り喧しく見ゆ果実の店は
ゴムの輪を手首に嵌めてゐる人の女のやうな指がレジ打つ
炊ぎなどに時割くこともあへなくてセロリは匂ふ夜の厨に
わが使ふ光と水と火の量の測られて届く紙片三枚
生命線の短き手相見てしまひ思へることのちりぢりとなる
反復をのがれむとのみゆく旅にしだれ桜は見ごろと言へり
はじけたる草の実にふとたぢろぎし鳩のそのまま歩み去りたり
あけびの花の芯の黒まで行き着きてまた戻りくる何の意識か
赤松の幹に斜にたち割られ遠くかがやく苗代の水
くだり来て遠目となれる夜の桜なまあたたかしふり返るとき
旅びとも馬も疲れて眠りたらむセロファンが道を吹かれてゆけり
スカートをたたみて置きて眠らむに久しく聞かずダミアの唄も
雨傘を持たせて帰しやりしあと争はむ家族もわれにはあらぬ
白の花の多き季節と言ひてゐし亡き母を思ふ雨に倦む日は
思はぬときに目に来る記憶の一つにて皇帝ハイレ・セラシェの写真
咲きそろふ黄の薔薇のなか布きれのやうに余れる花びらは見ゆ
箪笥一棹と思へど移すあてあらずまた幾日か降りつづく雨
何事か夜の明くるまに終りゐて少女らはみな白の靴履く
鳥も虫もみな地に落ちて死にてをり夏の落ち葉を掃きつつ思ふ
混線し入りくる曲の名も知らず短く切れぬ夜の電話は
もろともに声を挙げたるたれも亡し間遠になりて花火は終る
身を責めてうすらぐ咎と思はねど旅ゆきて売子木の花どきに遭ふ
日のくれをひそみて待ちてゐし如くライトを浴びす噴水の穂に
亡き人の使ひ残せる香水も飛びて小さき瓶すきとほる
われの名をうすく彫りたる銀の匙まことさいはひうすきわが名よ
惜しみつつ時間を食べてゐる虫のわれかと思ひ膝に手を置く
右腕をかばはむとのみ眠りつつつめたき魚となりては目ざむ
針柚子を椀に浮かしてなす夕餉何を食べてもひもじきわれか
灯を一つ残して出でてゆく習ひ忌の日の薔薇もしをれそめつつ
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雲の地図
身を責めて
いつの日の海とも知れず現るる水平線はつねに目の高さ
ついばみて足もとにゐし鳩一羽ふとなまぐさし飛びたつときに
保つべき距離と思ふに鼓動などの木にも草にもあるごとき日よ
女にて竦む思ひの間々きざす人ごみのなかいま橋の上
わが知らぬ職種もあらむかたはらの一人は磁気のごときをまとふ
どのやうなかなしみをまた知るわれか胸濡らしつつ髪を洗へり
消しておくテレビに映りゆくりなく逆三角をなすもわが顔
みづからのこめかみ押して堪へむとす分別といふがよみがへりつつ
背後よりしづもる夜更け使ひたる鋏を置けば音はねかへる
さわがしく光を反しゐたる雪しみじみ白し夜の闇に見て
かなへられぬ願ひの一つ前面に踊りて出づる黒衣を待つは
眠り薬のきき出すころか胸の上に軟体となる十本の指
青みさす雪のあけぼのきぬぎぬのあはれといふも知らで終らむ
うす雲にまぎるるほどの残月と仰ぎしことも夢かも知れず
階段を昇りゆくときひざまづくかたちに椅子の見ゆる事務室
踊り場のガラスはいつも曇りゐて坂下の沼とけぢめのつかぬ
運といふたれにもつきまとふものならむ採点に根を詰めゐて思ふ
目の前が真紅に染みぬシクラメンを届けむといふ電話聞きつつ
すさみゐし午後と思ふにはかどれる仕事のことを人の言ひゆく
山の地図を柩に入れてやる見つつ死者になし得るなべてさびしき
告げやらむ人もあらねど喪の家の夜の賑はひを脱けて戻り来
花びらの反りて辛夷も過ぎむとす影の濃き日と思ひ仰げば
色の濃きプラム、無花果入り混り喧しく見ゆ果実の店は
ゴムの輪を手首に嵌めてゐる人の女のやうな指がレジ打つ
炊ぎなどに時割くこともあへなくてセロリは匂ふ夜の厨に
わが使ふ光と水と火の量の測られて届く紙片三枚
生命線の短き手相見てしまひ思へることのちりぢりとなる
反復をのがれむとのみゆく旅にしだれ桜は見ごろと言へり
はじけたる草の実にふとたぢろぎし鳩のそのまま歩み去りたり
あけびの花の芯の黒まで行き着きてまた戻りくる何の意識か
赤松の幹に斜にたち割られ遠くかがやく苗代の水
くだり来て遠目となれる夜の桜なまあたたかしふり返るとき
旅びとも馬も疲れて眠りたらむセロファンが道を吹かれてゆけり
スカートをたたみて置きて眠らむに久しく聞かずダミアの唄も
雨傘を持たせて帰しやりしあと争はむ家族もわれにはあらぬ
白の花の多き季節と言ひてゐし亡き母を思ふ雨に倦む日は
思はぬときに目に来る記憶の一つにて皇帝ハイレ・セラシェの写真
咲きそろふ黄の薔薇のなか布きれのやうに余れる花びらは見ゆ
箪笥一棹と思へど移すあてあらずまた幾日か降りつづく雨
何事か夜の明くるまに終りゐて少女らはみな白の靴履く
鳥も虫もみな地に落ちて死にてをり夏の落ち葉を掃きつつ思ふ
混線し入りくる曲の名も知らず短く切れぬ夜の電話は
もろともに声を挙げたるたれも亡し間遠になりて花火は終る
身を責めてうすらぐ咎と思はねど旅ゆきて売子木の花どきに遭ふ
日のくれをひそみて待ちてゐし如くライトを浴びす噴水の穂に
亡き人の使ひ残せる香水も飛びて小さき瓶すきとほる
われの名をうすく彫りたる銀の匙まことさいはひうすきわが名よ
惜しみつつ時間を食べてゐる虫のわれかと思ひ膝に手を置く
右腕をかばはむとのみ眠りつつつめたき魚となりては目ざむ
針柚子を椀に浮かしてなす夕餉何を食べてもひもじきわれか
灯を一つ残して出でてゆく習ひ忌の日の薔薇もしをれそめつつ