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さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―
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全短歌(10791首)(資料グループ)
在り通ふ(目録)
/ 11652ページ
目録ID
ku006008
タイトル. 版. 巻次
在り通ふ
タイトル. 版. 巻次(カナ)
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野分の章
タイトル関連(カナ)
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/ 11652ページ
関連目録
野分の章
在り通ふ
乾き易くなりしてのひら気にしつつ持つもの多く朝々を出づ
何に使ふ石とも知れず運びたるいにしへびとに似て在り通ふ
容易にはたれにもやめられぬ職場ならむ勤務表に名を入れつつ思ふ
果たし来し仕事といふも敢へ無きに未だ灯ともす隣のビルは
雨傘に身を庇ひつつ歩みゐていつより蟹の匂ひをうとむ
硬貨一枚握れるほどのこだはりと思ひなしつつ駅までの闇
テラスより見おろす街も秋めきぬビルのあはひに白煙あがる
台風の進路を示す矢印のかなたの海もあをくたそがれてゐむ
洗ひおきし葡萄は露を溜めてをり死にてもたれも褒めてはくれず
苦しみも過ぎて思へばきれぎれに見たるドラマの画面のごとき
堰を切りてなだるるごとき思ひよりふと浮き出でてこよひは眠る
阻まれて目をあげしとき木のやうに伸びて茂れる山牛蒡立つ
街路樹の黄ばみ早きは何の木か屋根のみ見えてバスの行き交ふ
待たれつつせかれつつなす宵々の荷造りといふもわが身に応ふ
この部屋の矩形を全世界として出で入るはわが死人はらから
雨の夜の冷ゆる空気を嗅ぎてゐて古りつつ痛む傷かと思ふ
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野分の章
在り通ふ
乾き易くなりしてのひら気にしつつ持つもの多く朝々を出づ
何に使ふ石とも知れず運びたるいにしへびとに似て在り通ふ
容易にはたれにもやめられぬ職場ならむ勤務表に名を入れつつ思ふ
果たし来し仕事といふも敢へ無きに未だ灯ともす隣のビルは
雨傘に身を庇ひつつ歩みゐていつより蟹の匂ひをうとむ
硬貨一枚握れるほどのこだはりと思ひなしつつ駅までの闇
テラスより見おろす街も秋めきぬビルのあはひに白煙あがる
台風の進路を示す矢印のかなたの海もあをくたそがれてゐむ
洗ひおきし葡萄は露を溜めてをり死にてもたれも褒めてはくれず
苦しみも過ぎて思へばきれぎれに見たるドラマの画面のごとき
堰を切りてなだるるごとき思ひよりふと浮き出でてこよひは眠る
阻まれて目をあげしとき木のやうに伸びて茂れる山牛蒡立つ
街路樹の黄ばみ早きは何の木か屋根のみ見えてバスの行き交ふ
待たれつつせかれつつなす宵々の荷造りといふもわが身に応ふ
この部屋の矩形を全世界として出で入るはわが死人はらから
雨の夜の冷ゆる空気を嗅ぎてゐて古りつつ痛む傷かと思ふ