機関トップ
資料グループ
テキスト一覧
年表一覧
キーワード一覧
さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―
トップページ
資料グループ選択
全短歌(10791首)(資料グループ)
遠景-離職あとさき(目録)
/ 11652ページ
目録ID
ku008004
タイトル. 版. 巻次
遠景-離職あとさき
タイトル. 版. 巻次(カナ)
タイトル. 版. 巻次(ローマ字)
タイトル関連
印度の果実
タイトル関連(カナ)
タイトル関連(ローマ字)
欧文タイトル
タイトルに関する注記
編著者
編著者(カナ)
編著者(ローマ字)
出版者
出版者(カナ)
出版者(ローマ字)
出版年
出版年終
数量
形状
大きさ
大きさ(縦)
大きさ(横)
材質
形態に関する注記
保存状況
縮尺
その他の注記
言語
日本語
ISBN
ISSN
件名
件名(カナ)
件名(ローマ字)
地名件名
地名件名(カナ)
地名件名(ローマ字)
人名件名
人名件名(カナ)
人名件名(ローマ字)
内容年
内容年終
内容細目
内容細目(カナ)
内容細目(ローマ字)
解題・説明
解題・説明(英語)
来歴
来歴(英語)
所蔵機関
原資料の所在地
資料番号
管理記号
カテゴリ区分
図書
資料種別
資料分類(大分類)
資料分類(中分類)
資料分類(小分類)
文化財情報
manifest.jsonへのURL
参照データ
関連ページURL
関連画像URL
自治体史掲載
出版物・関連資料
翻訳元の言語
権利関係・利用条件
原資料の利用条件
権利関係・利用条件に関する注記
緯度・経度・高度に関する注記
DOI
既刊目録名
デジタル化の経緯に関する注記
/ 11652ページ
関連目録
印度の果実
遠景-離職あとさき
うす雪の白くこごれるしづけさにあと幾朝と思ひつつ出づ
雪のあとの木の間しづもり身の軽きものの足跡かそかに曳けり
登庁のかはりなければ三月後にやめゆくわれと人に知られず
一度にて点きしライター思はざる大きほのほを目の前に上ぐ
B4の紙片一枚回付され組織をまるごとゆさぶる日あり
狐ほどに痩せたる顔を持ち歩く夢ながながと見て夜の明けぬ
やめてゆく職場に在れば日毎日毎遠景となる書類の束も
二十歳にて教員たりきこだはらぬ性にからくも勤め続けし
追ひ詰められし思ひにをれば目の前のパンジーの花も両眼を持つ
暇々に物縫ふならひいつとなく失せて買ひおく更紗も古りぬ
目つぶしを投げて鬼よりのがれしが鬼の顔さへわれは見ざりき
ユリア樹脂の羊歯あをあをと繁らせて装ほふことの限りも見え来
流氷の寄せこむ春と言ふ聞けばわが待つ春にかさねて思ふ
ゆく末に虹を見ぬとも決まりゐず光るコインのまろび出でくる
道々に思ひつづけしはかなごと目の前に来て木の立ちあがる
うたかたの職場におのれ尽くし来ぬ指のあはひを風の抜けゆく
くらがりに時計を打つはたれの手か二階の部屋と気づきて寒し
生活の糧を得むのみに働くと思ひ見ざりき日々に気負ひて
しろじろとどこからも見ゆる明るさに喪の家の灯の夜すがら点る
みひらかば大きなる目を逝きまして左合はせの白衣もやさし
生きをれば嘆くことのみあるものをいたく小さし柩の顔は
縛られつつ護られてもゐしわれならむ公務員とふ肩書失せぬ
余すなく咲ける桜を仰ぎゐてかかるゆとりもわれに久しき
野の空のいづこに落ち合ふ蝶ならむふはふはとしてとめどなく舞ふ
大仰なしあはせなどは願はねどすこやかにしばしあらしめ給へ
妹の在らば停年まで働かむかかる思ひも痛みを誘ふ
三枚のガラスを透かす角度にて花びらの如し黄の洋傘は
定期券を忘るることなどのなくてすむたつきのあるを知らで過ぎ来し
有楽町へ着くまで長し独りごとを言ひやまぬ人と隣りあはせて
立ちどまり捨てし煙草を踏み消して去りゆくさまの映画めきたる
青銅の像を見をれば胸板のつめたかりにし夜を忘れず
あやとりをしてゐし夢にたれならむもうひとりゐし幼な子の影
湯のたぎる待ちて立ちゐていつよりかマッチを置かぬ厨と気づく
春の夜と思ふやさしさこぼしたる香水のあともすぐ乾きたり
わが持てるうらなひの本かの家に縞目さだかに育ちゆく猫
何のかたちにも折り得むにひろげたる紙のまま置く思ひと言はむ
沿線に春闌けにけむ勤めやめて桐の花など見られずなりぬ
ナビゲーション リンクのスキップ
印度の果実
遠景-離職あとさき
うす雪の白くこごれるしづけさにあと幾朝と思ひつつ出づ
雪のあとの木の間しづもり身の軽きものの足跡かそかに曳けり
登庁のかはりなければ三月後にやめゆくわれと人に知られず
一度にて点きしライター思はざる大きほのほを目の前に上ぐ
B4の紙片一枚回付され組織をまるごとゆさぶる日あり
狐ほどに痩せたる顔を持ち歩く夢ながながと見て夜の明けぬ
やめてゆく職場に在れば日毎日毎遠景となる書類の束も
二十歳にて教員たりきこだはらぬ性にからくも勤め続けし
追ひ詰められし思ひにをれば目の前のパンジーの花も両眼を持つ
暇々に物縫ふならひいつとなく失せて買ひおく更紗も古りぬ
目つぶしを投げて鬼よりのがれしが鬼の顔さへわれは見ざりき
ユリア樹脂の羊歯あをあをと繁らせて装ほふことの限りも見え来
流氷の寄せこむ春と言ふ聞けばわが待つ春にかさねて思ふ
ゆく末に虹を見ぬとも決まりゐず光るコインのまろび出でくる
道々に思ひつづけしはかなごと目の前に来て木の立ちあがる
うたかたの職場におのれ尽くし来ぬ指のあはひを風の抜けゆく
くらがりに時計を打つはたれの手か二階の部屋と気づきて寒し
生活の糧を得むのみに働くと思ひ見ざりき日々に気負ひて
しろじろとどこからも見ゆる明るさに喪の家の灯の夜すがら点る
みひらかば大きなる目を逝きまして左合はせの白衣もやさし
生きをれば嘆くことのみあるものをいたく小さし柩の顔は
縛られつつ護られてもゐしわれならむ公務員とふ肩書失せぬ
余すなく咲ける桜を仰ぎゐてかかるゆとりもわれに久しき
野の空のいづこに落ち合ふ蝶ならむふはふはとしてとめどなく舞ふ
大仰なしあはせなどは願はねどすこやかにしばしあらしめ給へ
妹の在らば停年まで働かむかかる思ひも痛みを誘ふ
三枚のガラスを透かす角度にて花びらの如し黄の洋傘は
定期券を忘るることなどのなくてすむたつきのあるを知らで過ぎ来し
有楽町へ着くまで長し独りごとを言ひやまぬ人と隣りあはせて
立ちどまり捨てし煙草を踏み消して去りゆくさまの映画めきたる
青銅の像を見をれば胸板のつめたかりにし夜を忘れず
あやとりをしてゐし夢にたれならむもうひとりゐし幼な子の影
湯のたぎる待ちて立ちゐていつよりかマッチを置かぬ厨と気づく
春の夜と思ふやさしさこぼしたる香水のあともすぐ乾きたり
わが持てるうらなひの本かの家に縞目さだかに育ちゆく猫
何のかたちにも折り得むにひろげたる紙のまま置く思ひと言はむ
沿線に春闌けにけむ勤めやめて桐の花など見られずなりぬ