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目録ID ku012026
タイトル. 版. 巻次 新しき塩
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短歌
新しき塩
巻くときの機械の力一瞬に解けて螺旋をなすカタン糸
招きたるわざはひにして夜を渡るしぐれの音のごとく過ぎにき
円なさぬ円を描きつぐ目の前に開きて緊まるガーベラの朱は
ペプラムを押さへつつ行き海よりの風に身すがら煽られ易し
立ちそそる太き煙突仰ぎゐて声出づるごとし煙出づるは
砂山のゆふべを来れば砂の上まだらなる陽の差すごとく差す
美しく見ゆる位置まで遠ざけて波打ちぎはの露頭のごとし
通貨に如かぬ言語といへり夜の海は白き皮膜となりてひろがる
太陽の国へ戻りてゆくための時間と思ひ地下書庫にゐる
木によりて異なる声を挙げゐると風の疎林を抜けつつ仰ぐ
果たさざる約を持ちあふへだたりに白のつつじも花過ぎむとす
暮れてゆく楡の梢の鳥一羽エジプト文字のさまにしづまる
アルミ箔の用途の一つ銀いろの鶴折りてわれの声なく遊ぶ
生き残る者のさだめに指輪もて傷つけし爪の血を噴きやまず
人に見せてみづからの見ぬ顔あらむ洗ひし髪の肩になだるる
地上二メートルに人の溢れて行き交へば上限のなき闇のみ思ふ
シェパードの一頭も飼はばたのしきかシチューは香りよく煮つまりぬ
新聞を畳まむとして起こしたる風に驚く夜更けのわれは
羽根をのばすといふことのあり係累をうべなひていふ言葉と思ふ
肉親のみな失せたればいづこより来りしわれのいづこまで行く
新しき塩を掬ふべき手と思ふほとばしる水に打たせつつゐて