[板垣 武四]
札幌市長 板垣武四
ここに第一巻「通史一」を刊行いたします。いままでに「史料編一」(第二回配本 第六巻)、「史料編二」(第一回配本 第七巻)を刊行してまいりましたが、本巻は明治以前の、いわば札幌の黎明期の姿を叙述しております。この時期の札幌が、これほど詳しく、また体系的に描かれたのは今回がはじめてであり、広くご活用いただきたいと存じます。第一回配本時(昭和六十一年三月)の「発刊にあたって」を掲げておきます。
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札幌市は、ここに『新札幌市史』全八巻の刊行をはじめます。その企図するところは「刊行の趣旨」(巻末)のとおりですが、要は、正当な札幌の歴史を集成することにあります。
近代北海道の夜明けと共に歩んできた札幌の人口はいま百五十四万(平成元年二月現在百六十二万人)を超え、日本の五大都市の仲間入りをするまでになりました。そのことは大都会が持つ弊害に陥りやすいことでもありますが、進取の気性に富む札幌ッ子はわが街を<開かれた街>に育て続けています。
例えば、昨年の市政世論調査によりますと、札幌に愛着を感じている人が九〇・六パーセントに達し、観光客の動態調査においても高いパーセントでこの街に好印象を抱いておられることが、何よりもそれを証拠だてております。
経済活動が活発であり、街並みが美しく、自然が豊かであり、かつ高い芸術文化を創造している都市──これほど人々の生活が快適なことはありませんが、私どもは子孫のためにもそんないい都市を作ってゆきたいものです。
この市史は近代以前も含めて札幌の歴史を明らかにしようとするものですが、史料探索の徹底を期すると共に、地域史や各種事業史など郷土史研究の目覚ましい成果をふまえ、広く清新な史観に立って編むことを念願としています。幸い高倉新一郎編集長をはじめこの道に造詣の深い編集員、さらには多くの機関・人々のお力添えを得て作業を進めていますので、必ずや市民の貴重な共有財産になるものと信じて疑いません。
歴史は人間社会の教科書ともいいます。札幌の来し方を学ぶことの大切さは申すまでもないことであり、そこに深く思いを致し札幌創建一二〇年(昭和63年)を記念して刊行するこの市史が、札幌の素晴らしい<風土>を築くための糧となることを心から願うものです。
平成元年三月
風土>開かれた街>