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札幌の中期遺跡とTピット

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 札幌市内から縄文時代中期の遺跡は、約一〇〇カ所近く発見されており、全遺跡のうちの半分近くを占める。このうち、住居跡群は、東部の野幌丘陵と月寒丘陵、石狩湾に近い紅葉山砂丘などに集中している。墓跡の可能性のある土壙は、野幌丘陵上のS二六五遺跡や西区のN二九三、N三〇九遺跡などで発見されているが、人骨などは残存していなかった。
 縄文時代中期に普遍的にみられる遺構として溝状ピットあるいはTピットとよばれるものがある。昭和四十二年に函館空港拡張工事の予定地から、細長くて深い溝状の掘り込みの遺構がみつかり、Tピット(Trap Pit)ではないかという推定のもとに名づけられたものである。形や大きさにバラエティがあるが、平面が二×一メートル内外の小判形のものと、長さ三~五メートル、幅数十センチメートルの細長い紡錘形のものとに分けられる。深さは両方とも一・二~一・五メートルである。前者の底面は平らで、杭を打ち込んだような穴がある。これは逆茂木痕ではないかと考えられる。後者はV字形の底面をもち、幅はせまく杭穴はない。掘り込み内には流入した腐植土と壁のくずれ落ちた土が詰まっており自然に埋まったことを示している。
 札幌市内では、白石区内のS一五三、二六七、二六八遺跡や中央区のC一五一遺跡など各所で発見されている。