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前期の石器

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 厚手の縄文尖底土器群に伴う石器群は、基本的には東釧路Ⅳ式土器の石器組成を受け継いだもので、大きな変化はない。しかし道南西部から石狩低地帯にかけての地域、道東北部の遺跡とではその組成の差は歴然としてある。
 静内中野式土器に伴う石器は、石鏃、石銛、石槍、石錐(いしぎり)、縦型・横型のつまみ付きナイフ、石斧、多量の北海道式石冠と称される擦石、敲石、石皿、早期に比較して大型となる石錘がセットとなる。北海道式石冠は、かつては手持ち石杵と称されたこともある石器で、礫を細かく敲いてお供え餅型(おそなえもちがた)に作り出し、底面を平らな擦面としたもので、縄文尖底土器群、円筒下層式土器に非常に多く伴う、縄文時代前期に特徴的な石器である。札幌でも比較的多く発見されており、用途としては、前期の土器は多量の繊維が胎土に混入されることが多いため、生地の粘土に繊維を混ぜ合わせるための道具、あるいは土器の表面を研く道具と推定していたこともあるが、ものを擦り潰すための杵のような道具であることは間違いない。

図-7 縄文前期の石器(北海道式石冠、T310遺跡)