ビューア該当ページ

早期前半の文化

190 ~ 191 / 1039ページ
 いまから一万年ほど前、氷河期が終わり地球的規模で温暖化が始まった。縄文時代早期は、ちょうどその頃に始まった文化である。
 それ以前の石器だけの時代(旧石器時代)にたいして、土器、弓矢、丸木舟の発明がなされ、大型の野獣を主に対象とした移動性の強い狩猟生活から定着的な狩猟、漁撈、魚貝類・植物等の採集へと生業の主体が大きく変化した時期でもあった。その過渡期的な時期は、縄文草創期と呼んで縄文時代早期とは、区別して考える研究者も多くいる。
 北海道においてこの時期の遺跡は、江別市の遺跡において一点の土器が確認されたのみでその存在は万人の認めるところとはなっていない。北海道における先土器時代の遺跡には、細石刃、細石刃核、局部磨製石斧を伴出する遺跡が多くある。これらの石器組成はいわゆる「縄文草創期」の石器群にきわめて類似していることが指摘されている。近い将来、明確な「縄文草創期」の遺跡が発見される可能性は非常に高い。
 縄文時代早期の前半期、貝殻文・沈線文土器が盛行していた時期は、まだ寒冷の状況のようであり、発見された竪穴住居跡の構造等より見れば、深く堅牢な作りで床面にはほとんどの場合炉が設置されている。伴出した石器類の組成は、道東北部では直接的に狩猟・漁撈に結びつくもの(石鏃、石槍、ナイフ、石錘等)が主体をしめる。しかし石狩低地帯及びその周辺部から道南にかけては、断面形が三角形の独特の形をした擦石、石皿が多く伴出する。これはこの地域の生業が狩猟・漁撈のみでなかったことを示したものであり、気候条件、環境にかなり差があったようである。