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晩期の石器

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 晩期の石器群は、後期と大きな変化がなく、時期と地域によって石器の形態、組み合わせなどにわずかな差が認められる。
 市内で発見される後葉の石器群のうちT四六六遺跡では、無柄で基部にえぐりのある狭長な形態の石鏃が主体をしめ、ついで茎の短い、有柄で基部に浅いえぐりを持つものがわずかに見られ、柳葉形の石鏃は、一点を数えるのみである(図23-1~7)。この時期にも、石銛と呼ばれる石鏃の大形のものは、ほとんど姿が見られない。

図-23 縄文晩期の石器(T466遺跡)

 石錐は、後期中葉以後に見られるつまみを持ち、刃部を長く作り出す形態が姿を消し、棒状のものと剝片にわずかに刃部を作り出すやや粗雑なものがある(図23-12、13)。
 ナイフ類は、伝統的なつまみのついた縦形のナイフが、まったくといってよい程見られなくなり、太い柄のついたナイフに姿を変えている(図23-8~11)。また、縦長の黒曜石の剝片を利用した削器、搔器類も数多く出土している(図23-14、15)。
 礫石器では、後期に見られたていねいな面取りをおこない脚をつけた石皿に変わって、自然石の周囲を簡単に調整した石皿へと変化が見られる。この他に扁平片刃石斧、たたき石、擦石などが出土している。市内の他の遺跡でも同様な石器組成を呈している。
 市内で発見されていない前葉・中葉の石器群を概観すると、初頭では、後期の伝統をそのまま受け継いだ組成と形態から成り立っているが、中葉に至ると石鏃がやや大型となり、狭長な尖頭部と太い茎を持つものが多くなる。
 後葉に至って、つまみのついた縦形のナイフが姿を消して、太い柄のついた形態のものが出現する。この形のナイフは、後葉の北海道的な土器を持つ文化のなかにいち早く出現し、続縄文時代にも引き続き使用される。この種のナイフがアリューシャン列島、カムチャツカ半島、樺太などの広い地域に見られ、サケ属の分布とよく一致するところから、両者を関連づけて捉える考えも示されている。