同四十三年には岩崎隆人・宇田川洋・加藤晋平・河野本道により、これまでの研究の総括ともいうべき、「札幌市附近の遺跡―考察編Ⅰ―札幌扇状地における遺跡の先史地理学的考察」が発表される。これは、札幌扇状地として括られる自然地理的単元において発見された六五遺跡を先史地理学的な観点から検討を加えたものである。本地域にみられる遺跡を先土器時代からアイヌ文化期まで八期に分類し、さらに各地区ごとの遺跡の立地条件、標高差などから、札幌扇状地の生成を考古学的観点から明らかにしようとしたものである。その結果は、札幌面には、縄文時代中期以降の遺跡や遺物がみられ、その標高も一〇~三〇メートルに集中する。中の島面では、縄文時代早期以降の遺跡が分布しており、標高四〇~五〇メートルに集中している。平岸面では、旧石器時代以降の遺跡がみられ、標高三〇~六〇メートルのところに分布している。これらの諸検討により札幌扇状地が形成され、人が住めるようになるのは、きわめて新しい時期であることを指摘している。