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大曲洞窟遺跡

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 モヨロ貝塚人の陰にかくれてあまり知られていないが、昭和十六年にはやはり網走で重要な発見がなされていた。北大解剖学教室によって、網走刑務所の裏手にある大曲洞窟より、綱文式土器を伴って二十数体の人骨が発掘されたのである。この発掘調査の報告書は昭和三十年に刊行されたが、残念なことには、人骨の形質についてはまったく触れられていない。この洞窟からは北大の調査団とは別に、米村喜男衛が、やはり綱文式土器を伴う非常に保存の良い一個の頭骨を発掘し、網走郷土博物館に保存していた。昭和六十年にこの頭骨を詳しく研究した札幌医大の石田肇によれば、この頭骨は北海道東北部の縄文人頭骨に共通する特徴を示すが、顔面は著しく平坦で、おそらく北方モンゴロイドの影響を受けているのであろう、ということである。