武四郎はモニヲマ・コモンタなどのよき相談相手であり、彼らの窮状を救っているように、アイヌの人々からの信頼もあつく、友情にみちた深い交流をおこなっていた。武四郎の活動がひときわ輝いているのも、それだけアイヌが暗い状況におかれていたからであった。また武四郎のヒューマンな活動が、その後充分に継承されず、アイヌに対する民族的な差別が解決されなかったからである。いま現在、武四郎への評価が高いのも、この点が含まれ反省の材料とされている。われわれは近代に入り、〝アイヌの父〟バチュラーをもつが、幕末における〝アイヌの父〟松浦武四郎ともども、彼らの素志と活動を継承していかなければならない。