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『岡本氏自伝』中の荒井の意見

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 岡本監輔については次節で述べるが、その『岡本氏自伝』中、文久三年にイシカリで会った荒井金助の意見が書留められているので紹介する。
小樽内ハ西岸第一ノ良港ニシテ物類ニ富ミ、他日ノ開拓ヲ待テ北海富庶ノ埠頭トナルヘク、東北ニ札幌アリ、土地広坦ニシテ、沃壌多ク、真ニ金城湯池、金城千里ノ城ト称スルニ足ル。此ハ此島胸腹ノ地ニシテ、北島ヲ控御スヘキ根本要害の地ナリ。

 これではまずオタルナイが良港とされ、サッポロが非常に重要視され、イシカリについてはまったく言及されていない。しかしこの『自伝』は、後述するようにかなり後、すなわち札幌が北海道の首都として定着した後に記されたものであり、また荒井が本当にサッポロを「金城湯池」(堅固で容易に抜くことのできない城と堀)の要害と考えていたかとなると、疑問というほかはない。少なくとも当時のサッポロは、道路の発達を考慮に入れても、ツイシカリのような要衝と考えるのは無理のようである。