十九年九月、
桂二郎に葡萄酒醸造場及び附属の土地建物器具等をすべてそのまま貸与し、十九年九月から二十三年三月まで三年七カ月間経営を委託、その間の経費として一万七〇〇〇円を給与することとした。委託前の経費醸造高は表4のようであった。しかし、二十年八月までの一カ年間の葡萄酒、武蘭地(ブランデー)の醸造高が八九石、価格三〇九〇円、諸経費四一九六円余、差引一一〇六円余の損失を来たし、同年十二月
桂二郎の願を入れ、葡萄園は合わせて一八八六円三一銭四厘で払下げられ事業を継続し、二十二年より
花菱葡萄酒醸造所と称した。同年は葡萄一万八〇〇〇貫目をもって葡萄酒一八〇石、武蘭地六石五斗を醸造し、代価五三六五円、経費四二六六円五五銭九厘、差引一〇九八円四四銭一厘の利益を上げた。二十四年十一月
谷七太郎がこの経営を引きうけ、谷は市内の大手雑貨の店や東京、名古屋、大阪へも販路を拡げたがその後伸び悩み、大正二年(一九一三)ついに事業を廃止している。
科 目 | 金員 | 製造品名 | 数量 | 代価 | 販売品名 | 数量 | 代価 |
俸 給 | 493円000 | 葡萄酒 | 101打1瓶 | 242円600 | 葡萄酒 | 101打1瓶 | 242円600 |
諸 給 | 1586. 188 | 上等武蘭地 | 50打 | 270. 000 | 上等武蘭地 | 50打 | 270. 000 |
庁 費 | 281. 935 | 下等 同 | 7石 | 203. 000 | 下等 同 | 7石 | 203. 000 |
農工事業費 | 463. 000 | | | | | | |
営繕費 | 240. 374 | | | | | | |
総 計 | 3064. 497 | | | 715. 600 | | | 715. 600 |
1.数量欄の「打」はダース(12本)。 2.醸造額が少ないのは醸造季節に際し事業を委託したことによる。 3.『北海道庁第一回勧業年報』より作成。 |