このような札幌区内に仕事を求めて集まる労働者たちに保護の手を差しのべようとしたのが、二十九年十一月須賀保綱を会長に設立された北海道労働者救済会である。その設立趣旨によれば、「彼労働者ハ毎年札樽間に集合スルモ北海道ノ常トシテ冬季降雪ノ候ニ到レハ自活ノ途ヲ失ヒ飢餓ニ頻シ其局遂ニ不正ノ心ヲ起シ良民ヲ害スルノミナラス其筋ノ煩労ヲ蒙ムルコト枚挙に暇アラス(中略)其自活ノ途ヲ与ヘ尚ホ且保護スヘキ義務ヲ担フ周旋屋等ニモ不良不親切ナルモノアリテ近クハ雇役者(漁業家、土木請負者)ヘ故意ニ被害ヲ被ムラシムルコト往々アルノ巷説ヲ聞ケリ仍テ有志ノモノ協力シ北海道固着ノ悪弊ヲ洗除シ博ク雇役者ノ便益ヲ計ラントス」とある。この文言からすれば救済会の目的は、労働者へ自活の道を開かせ保護し、雇役者=雇用主が斡旋業者から不利益をこうむらないよう保護するにあった。救済会の名称は、あたかも労働者を保護するかのような印象を与えるが、それは名目であって内実は自活の道を失って細民化した労働者が犯罪に走ったりしないよう仕事を与え社会秩序を維持するにあったようである。