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道毎日の編集方針

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 ここでは二十二年四月九日から同十六日まで七回にわたり連載された阿部社長の論説(二回目から「政治上に於る阿部の意見」の副題が付されている)により、同新聞初期の方針を紹介したい。
 この論説は、阿部が政治上の意見を社員に知らせる目的で記した文を、「本社が将来に執る所の主旨を明すに足るへしと思はれるため」として掲載したもので、まず新聞社が政治上の意見をもつことの必要性を強調したのち、同社のそれを「第一 北海道の開拓は日本全国の利益なること、第二 農漁商工等各営業は北海道開拓上に同様の必要を有すること、第三 北海道の人士は改進党其他各政党の外に立ち公平に各党の議論を判断し可否す可き位地を占め居ること」(四月十日付)の三カ条とした。ついで「第一」「第二」の理由を詳述したのち、第三に関して「彼等政党は我々の意見の如く北海道開拓を日本全国の利益なりと考え居るへきや(中略)他日北海道問題の起るに当りて党員の多数が非開拓論を主張する事にても有りたりたらんには」政党に対する尽力は非開拓論に対する尽力となる結果となり、「北海道の人士中に於て(中略)苟も開拓論を執り居る以上には政党に加盟することは到底軽躁の譏りを免れさると思はるるなり」(十四日付)と、開拓の遂行と政党関与の両立しないことを主張した。
 しかしたとえば二十四年早々行われた北海道議会設置請願において、阿部は上京委員として活動を行って政党とのつながりを深くし、『道毎日』も論陣を張り運動の鼓吹につとめるなど、この「意見」とは必ずしも合致しない言動も少なくはない。あるいは阿部の意見は同紙が公報掲載新聞であり、かつ道庁の後援を得て創刊したという刊行初期事情も加わっているのであろうか。