札幌区の人口は、表15のように明治三十二年の札幌区制制定期には四万人ほどであった。一〇年後の四十二年には七万三〇〇〇人と急増している。現在の札幌市域に占める割合も五五パーセントが六三・八パーセントとなる。そのため、前述のように札幌区では鉄道以北の地域、札幌区中心部の西部や東部を区画して新町名をつけていった。これは人口の増加にともない、都市空間としての市街地がそれらの地域へ拡大していったことを示している。札幌区の市街地の拡大は札幌区内にとどまらず、隣接する
豊平町や札幌村などへも波及していった。
年 | 札幌全域 | 札幌区 | 区増加数 | 区増加率 | 区集中率 |
明32 | 73,503人 | 40,578人 | 3,114人 | 8.3% | 55.2% |
33 | 79,921 | 46,103 | 5,525 | 13.6 | 57.7 |
34 | 83,739 | 48,720 | 2,617 | 5.7 | 58.2 |
35 | 83,945 | 51,327 | 2,607 | 5.4 | 61.1 |
36 | 88,587 | 55,304 | 3,977 | 7.7 | 62.4 |
37 | 88,470 | 57,458 | 2,154 | 3.9 | 64.9 |
38 | 93,777 | 60,884 | 3,426 | 6.0 | 64.9 |
39 | 98,678 | 62,493 | 1,609 | 2.6 | 63.3 |
40 | 106,672 | 66,193 | 3,700 | 5.9 | 62.1 |
41 | 109,824 | 70,075 | 3,882 | 5.9 | 63.8 |
42 | 114,730 | 73,221 | 3,146 | 4.5 | 63.8 |
43 | 121,687 | 88,841 | 15,620 | 21.3 | 73.0 |
44 | 126,654 | 93,218 | 4,377 | 4.9 | 73.6 |
45 | 129,229 | 95,419 | 2,201 | 2.4 | 73.8 |
大 2 | 135,294 | 96,897 | 1,478 | 1.5 | 71.6 |
3 | 139,588 | 99,318 | 2,421 | 2.5 | 71.2 |
4 | 121,766 | 83,276 | -16,042 | -16.2 | 68.4 |
5 | 125,766 | 86,680 | 3,404 | 4.1 | 68.9 |
6 | 128,837 | 89,596 | 2,916 | 3.4 | 69.5 |
7 | 134,139 | 94,568 | 4,972 | 5.5 | 70.5 |
8 | 138,062 | 98,648 | 4,080 | 4.3 | 71.5 |
9 | 144,630 | 102,580 | 3,932 | 4.0 | 70.9 |
10 | 157,762 | 116,283 | 13,703 | 13.4 | 73.7 |
11 | 169,110 | 127,044 | 10,761 | 9.3 | 75.1 |
1.札幌全域とは現在の札幌市域を示す。 2.『北海道戸口表』から作成。 |
たとえば三十九年、札幌区では「区外児童収容法」を施行した。それによると、隣接する村から札幌区内の小学校へ通学する者が四三〇人となるため、児童の居住する村から委託費を徴収することと、高等科の児童からは授業料を増徴することとした。この児童たちはもと区内に居住していたが、転居した後も区内の学校に通学しているものが主であったようだ。そして札幌村からは七五人、
豊平村からは一二人の児童が委託された。さらに札幌村とは「札幌村大字苗穂ノ内苗穂新道部落」と委託区域を指定するようになる(区会決議録 明39)。この地域は現在の北三条東八丁目以東の地域である。
この地域は、四十三年の札幌区と隣接町村との境界変更の際に、札幌区に編入された札幌村の一部である。札幌村から編入された地域を鉄道線と東一二丁目通で四分し、北西側から左回りに甲乙丙丁と四地域にわけた場合、面積と戸数は、甲地区は五三反四六畝と二三戸、乙地区は三〇反一五畝と一二八戸、丙地区は一六反二〇畝と四七戸、丁地区は八一反八七畝と二〇戸である。乙丙地区は前述の新道部落のことであろう。札幌区から最も遠い丁地区は、面積が広いが戸数は少ない。札幌区に最も近くなる乙地区は、面積は丁地区の三分の一強だが戸数は最も多くなる。さらに同地域の学齢児童についても、札幌区へ委託される数は、三十九年に四地区合計の五四人のうち乙地区の児童が三九人(全学齢児童数一〇〇人)、同じく四十年には五九人中乙地区が四六人(全学齢児童数一一〇人)となっている。そして鉄道以北の甲地区と丁地区は畑地一五〇~三〇〇円で、宅地としての売買はない。鉄道南部の乙地区と丙地区は耕地一〇〇~五〇〇円に対し、宅地価格が四五〇~九〇〇円となっている(表16~18参照、境界変更ニ関スル書類 明43)。これらから札幌村の内、札幌区へ編入したのは区に近接している地域であるが、その内でもより区に近接している地域は、市街地化が進んでいたことをうかがわせる。このように、札幌区の市街地が隣接町村の接続地へ波及していたことが、同地域の札幌区への編入を促進したと思われる。
表-16 札幌区へ編入された苗穂村及び札幌村の地区別面積と戸数 |
| 甲 | 乙 | 丙 | 丁 | 計 |
面積 | 53反46畝 | 30反15畝 | 16反20畝 | 81反87畝 | 181反69畝 |
戸数 | 23戸 | 128戸 | 47戸 | 20戸 | 218戸 |
明治39年 | | 甲 | 乙 | 丙 | 丁 | 計 |
本村 | 12 | 7 | 17 | 10 | 46 |
委託 | 2 | 39 | 12 | 1 | 54 |
明治40年度 予定数 | | 甲 | 乙 | 丙 | 丁 | 計 |
本村 | 17 | 7 | 18 | 9 | 51 |
委託 | 1 | 46 | 11 | 1 | 59 |
宅地 | 耕地 |
| 甲 | 乙 | 丙 | 丁 | | 甲 | 乙 | 丙 | 丁 |
最高 | - | 900 | 600 | - | 最高 | 300 | 500 | 400 | 300 |
最低 | - | 450 | 450 | - | 最低 | 150 | 300 | 100 | 150 |
1.表17の本村とは本村小学校に通学の者,委託とは札幌区に委託通学の者。 2.表18の耕地はすべて畑地。 3.表18の宅地甲丁地区は耕地に準ずる。宅地としての売買なし。 4.表16~18:『境界変更ニ関スル書類』(明43)より作成。 |