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組積造の終焉

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 レンガ造建築石造建築は建築学上の呼称では「組積造」という。石造建築は札幌・小樽市内に多数存在するため特に注目をひかないが、全国的にみるときわめて珍しい建築物である。特に市内産のレンガと石材によった大建築は、札幌の特色である。
 組積造は幕末の西欧文明の流入とともにわが国に導入された。だがその歴史はきわめて短かった。導入からわずか七〇年足らずの大正末年に、地震国日本に不向きの構造法とらく印を押され、大規模建築への適用は建築禁止に近い法規を受け、建築構造の主流からはずされてしまう。明治二十四年の濃尾大地震、大正十二年の関東大地震で組積造は大被害を受ける。耐震性付与の可能性が少ない構造と技術的な判定を受けて、新興構造の鉄筋コンクリート造へ耐力構造の位置を譲ってしまうのである。
 札幌のレンガ造、石造の建築は、堅硬な地盤上に建つためきわめて健康な状態のままである。だがこの後、壮大なレンガ造、石造の建築物は出現の機会が閉ざされてしまったのである。