ビューア該当ページ

口絵

 / 1147ページ

札幌及定山渓名所案内』
(鳥瞰図、昭和三年一月十六日発行、発行人安田俊平、印刷・発行所交益社。両者とも札幌市南2条西13丁目。
一枚もの縦57センチメートル×横77センチメートルの折りたたみ本 札幌市文化資料室蔵)。

 表はここに掲載したように札幌市中を中心とし、上辺に定山渓温泉を配した鳥瞰図。裏面は「札幌及定山渓名所案内」として、札幌市中の名所と定山渓温泉の紹介。裏面左下隅に、定山渓温泉の元湯ホテル・鹿乃湯クラブ・定山園札幌市中の旅館中むら屋が枠に囲まれている。おそらくこの『案内』発行の出資者と思われる。

 鳥瞰図には代表的建物や施設の名称が記入されている。発行の前月に竣工祝賀会を終えた望楼や、開業したばかりの市電鉄北線も記載されている。文献資料の調査では位置が不明であった札幌村の亜麻工業会社が下辺右部に見えるなど、資料的価値は高い。しかし北海道庁庁舎が実際のかたちと異なっているなど、建物のかたちと配置が実態を示していない。鉄道(函館本線)を横断する道路は西一三丁目線であるが、西一二丁目線になっているなど、実際の道路網とは異なっている部分もある等々、当時の正確な市中の様子とするには注意を要する。

 また、安田はほかに昭和二年二月『北海道鉄道沿線案内』(交益社 大通西7、印刷は東京中目黒の交益社印刷所)と、内容の時代差はあるが昭和六年七月にこの鳥瞰図と同じ構図の『札幌名勝案内』(北陽社 南9西11)を発行している。