上水道事業をスムースに成長させるためには、その普及を図らなければならない。しかし給水装置の工事は当初は受益者負担の方針であった。その普及のためにはその工事を市費で負担してはという意見が出され、市長もその意向を持っていた(たとえば昭和九年六月の市会など)。そこで十年二月の市会で「自昭和十年度至昭和十一年度札幌市上水道給水工事費継続年期及支出方法」が提案され、三月九日可決され、市債を発行して工事費にあてることにして、水道の普及を図ることにした(札幌市会会議書類 昭10)。
一方、各戸への給水装置の工事については、十年度に実地測量を開始し、十一年度中には給水工事申込者二万一〇〇戸中、測量及び設計終了した分は一万二八二一戸、年内の工事終了は七七八五戸、十二年三月末には測量の大半が終了した。測量設計調査の進行と大体の工事の予定計画が確立したため、給水装置申込金を徴収する作業も並行して行った。十一年七月二十一日、第一回納額告知書を発行したが、計画通り収納できず、そのため予定通りに取付作業も進まなかった。しかし十二年三月末には申込金もほとんど納入され、極力設置工事を急いだが完成には至らなかったが、四月一日に給水を開始した。申込みに対する給水装置工事の完了は十月末になった。十二年度末現在、給水戸数は放任専用給水(一戸五人まで七五銭の定額料金、一人増えると一〇銭増)一万五〇九四戸、計量給水(一カ月の使用量ごとの使用料金)二二九一戸、放任共用給水(組合を作らせて給水、一カ月一戸につき三〇銭)八四二戸で合計一万八二二七戸であった(使用料は十二年当時)。この数字は十年に行った給水戸数実地調査の給水希望戸数一万九三八二戸に近い数字になった。
その後水道の普及は拡大し、昭和二十年末には、放任専用給水一万六七四八戸、計量専用給水二五三四戸、放任共用給水一四六六戸、合計一万九〇七一戸となった。水道使用量も十二年度一八万二一七九円が二十年度には四六万七七四七円五二銭と、普及戸数の割合以上に急増している。
また上水道の設備のもう一つの利点であり、都市防災上最も重要な施設でもある防火用の消火栓施設の設備が並行して行われた。十一年には七〇一個の施設を終了し、九月二十日には市内全線の通水を完了し、管理を消防本部に引き継いだ(札幌市事務報告)。