庶民金融機関として、無尽講、頼母子講を営業に転じた無尽会社があった。無尽とは、無尽業法(大4・6公布)第一条によると、一定の口数と給付金額を定め、定期に掛金を払込ませ、一口ごとに抽選入札等の方法により金銭・有価証券を給付するものである(社団法人全国無尽集会所 昭和四年度全国無尽会社要覧)。
札幌においては、
札幌無尽株式会社(大6・6設立)、
北海道無尽株式会社(大13・12設立)の二社が本店を構えていたが、昭和元年末の時点で他都市に比べ契約高が少なかった。そこで、
小樽無尽など各社が競って
札幌を営業区域に入れたという(北洋相互銀行五〇年史)。
表30は
札幌に本店をもつ無尽会社の営業状況である。昭和恐慌下の七年には、未収無尽掛金が多くなっているが、その後は減少した。払込資本金利益率は、本章一節の表7によると昭和恐慌期に一〇パーセント以上を示し高水準であったが、表24によると、
北海道無尽は日中戦争期には二~四パーセントに低下していた。
札幌無尽は、十二年三月に
日之出無尽(本店・旭川市)に吸収された。その結果、
札幌で営業していた無尽会社は、
北海道無尽、
日之出無尽、
北日本無尽(本店帯広市)、
小樽無尽、
拓殖無尽(本店旭川市)の五社五店舗となった。十一年末の五店の掛金者に対する給付高は約二六二万円、貸付高は約三七六万円であり、九年に比べて給付高は一一・四パーセント、貸付高は一三・一パーセント増えていた(
札幌市に於ける無尽会社の貸付状況、
札幌商工会議所 月報一四七号)。
| 昭7 | 昭9 | 昭11 | 昭13 |
北海道無尽 | 札幌無尽 | 北海道無尽 | 札幌無尽 | 北海道無尽 | 北海道無尽 |
給付金契約高 | 2,230 | 2,400 | 2,051 | 2,353 | 2,066 | ? |
掛金契約高 | 2,477 | 2,526 | 2,288 | 2,500 | 2,289 | ? |
給付済高 | 1,055 | 1,098 | 795 | 953 | 717 | ? |
貸付金 | 150 | 237 | 202 | 211 | 240 | 303 |
未収無尽掛金 | 215 | 132 | 154 | 82 | 134 | 124 |
無尽給付資金 | 278 | 356 | 406 | 564 | 432 | 426 |
当期利益金 | 7 | 11 | 8 | 10 | 4 | 4 |
社団法人全国無尽集会所『全国無尽会社要覧』各年,北海道拓殖銀行調査課『北海道及樺太株式会社集覧 昭和十四年版』より作成。 |
戦時期には、大蔵省は無尽会社の合同政策を推し進め、
北海道無尽も十五年十二月に室蘭無尽と合併し、それが十七年十月に
北日本無尽に合併された(
札幌市史 産業経済篇)。十八年十月以降には大蔵省の一県一社の方針により、道内の五無尽会社が
小樽無尽に合併され、翌年二月、名称を
北洋無尽株式会社(後の北洋相互銀行)と改めた(北洋相互銀行五〇年史)。