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製綱

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 札幌における繊維として製麻に次ぐのはロープ(製綱)である。第一次大戦後には北海道製綱株式会社が、市内豊平にて、マニラ麻・中国麻を原料として各種ロープ類を製造していた(札幌市 工業調査書 其ノ二)。表48は、北海道製綱の営業状況である。生産高は十二年上期の約一〇五万ポンドから十三年上期の約一五三万ポンドまで増加し、職工数も十一年上期の九一人から十三年上期には一八四人になった。創業時の欠損による前期繰越損金も毎期減少し、十三年上期にはプラスに転じた。同年下期にも生産は伸び、工場新築も果たしている(北海道製綱株式会社 営業報告書 各期)。
表-48 北海道製綱の営業状況        (単位;円)
 機械原料製品資産合計当期利益金販売益
大11下83,92963,43124,258481,94611,92437,970
12下90,22486,96334,989505,64221,976?
13下106,881196,60819,732941,06316,086100,861
14下123,955177,65628,2521,006,62814,98071,788
15下154,160111,80819,188815,125-4,39258,178
昭 2下164,626135,42687,6991,280,9218,06347,372
3下167,28482,24739,6571,167,4688,16756,617
4下203,13281,3499,1701,219,5868,82956,557
5下224,26635,98823,9311,194,6038,98054,569
6下213,59346,3628,4321,248,8238,72071,220
7下204,95551,67233,2611,199,59411,13774,339
8下202,88363,77529,7941,186,6597,10760,569
9下194,05338,5788,8141,129,95818,14273,203
10下176,708107,31629,3651,279,07826,98791,455
11下216,471127,92563,5381,377,12524,20873,558
12下223,865115,64913,0311,337,50825,11399,182
13下194,366120,7253,2261,112,05837,905114,683
14下160,148147,22732,9101,257,42837,972123,535
15下137,255197,08516,5421,189,77373,50861,174
16下125,744172,13933,5091,420,41666,43878,317
17下110,264201,64644,0251,459,19265,335126,834
18下97,944235,930319,8652,018,92825,02283,079
1.昭和4年下期から「製品」には「商品」を含む。
2.「販売益」は昭和17年下期から「販売益及工場作業益」。
3.北海道製綱株式会社『営業報告』(各期)より作成。

 しかし十四年上期には、需要減退、原料価格の下落により三割の操業短縮を断行した。下期には生産は回復したものの、価格は低迷したままで利益が減少した。十五年九月には大規模な争議が発生したが、これについては第六章二節で詳述されている。十一年下期から十二年下期までは従業員給料・手当総額が判明するので、会社総収入金に占める人件費率を算出すると、二〇・三パーセント、一五・二パーセント、一四・二パーセントと毎期低下していた。十三年からは、損益計算書の記載方法が変わり、給料・手当総額がわからなくなる。ただ、臨時的なものと思われる「給料及び手当」の項目はあり、その額も販売益金が増えたにもかかわらず十五年上期まで毎期減少した。これらが北海道製綱争議の背景をなしたものと考えられる。なお、十五年下期は争議は期初に解決したにもかかわらず「其余温容易ニ冷却セズ今年二月ニ至リ漸ク平静ニ帰復シタル状況」で、「工場経費ノ膨張ト粗悪品ノ製産等多大ノ損害ヲ招来シタ」のである(第一七期営業報告)。
 昭和恐慌期には、ロープを需要する漁業方面の不況、原料価格下落、同業者間の競争激化により業績は低迷した。昭和九年時点では従業員数二二五人、工場建物坪数一四五四坪、電動機二一台・四六二馬力を有している(工業調査書 其ノ二)。日中戦争期には、マニラ麻の輸入許可がなかなかおりず、原料確保に苦労し、原料相場も高騰した。十五年一月には、日本マニラ麻綱株式会社が設立され、製品の全国一手販売を行うことになり、北海道製綱は同社の委託製造を行うことになった(第四四期営業報告)。