営業が思うように伸張しないさなかに、第一次世界大戦の影響で、原料炭の高騰や炭質の悪化により規定の熱量のガスを生産できず、灯火用需要家の減退に拍車をかけた。そのため北海道ガスの営業成績は悪化し、表60にあるとおり、大正四年末に三〇二四戸あった使用戸数(コック開通戸数)が、十年末には二三〇七戸に減少した(なお大正十年六月末には、コック開通が二一六〇戸まで減少していた)。このような状況は、札幌だけに限らず全国的な状態であった。
表-60 ガス使用戸数 |
年 | 札幌 | 札幌 小樽 函館 |
大 1 | 1,426戸 | 3,600戸 |
2 | 2,944 | 12,288 |
3 | 3,121 | 13,046 |
4 | 3,024 | 12,159 |
5 | 2,762 | 11,635 |
6 | 2,613 | 11,145 |
7 | 2,642 | 10,951 |
8 | 2,549 | 9,995 |
9 | 2,307 | 9,231 |
10 | 2,477 | 8,928 |
11 | 2,521 | 8,689 |
12 | 2,671 | 8,622 |
13 | 2,807 | 8,899 |
14 | 3,034 | 9,311 |
15 | 3,008 | 9,146 |
昭 2 | 2,784 | 8,989 |
3 | 3,236 | 11,087 |
4 | 3,541 | 12,741 |
5 | 4,190 | 13,750 |
6 | 4,470 | 14,465 |
7 | 4,628 | 14,426 |
8 | 4,702 | 14,777 |
9 | 4,859 | 13,919 |
10 | 5,035 | 15,221 |
11 | 5,296 | 16,447 |
12 | 5,478 | 16,771 |
13 | 5,590 | 16,579 |
14 | 5,745 | 16,916 |
15 | 5,784 | 16,603 |
16 | 5,789 | 16,738 |
17 | 5,810 | 17,058 |
18 | 5,929 | 17,279 |
19 | 5,864 | 17,217 |
20 | 5,537 | 15,672 |
1. | 大正11年上半期まではコック開通戸数,同年下半期以降は取付管装置戸数。 |
2. | 昭和18年までは,12月31日現在,19・20年は9月30日現在。 |
3. | 北海道瓦斯株式会社『営業報告書』(各年)より作成。 |
ところが第一次世界大戦後、供給減少のために薪炭の価格が騰貴したこと、戦後も高騰を続けていた石炭価格が、経済恐慌と軍需途絶により低落したことなどのため、熱用供給が伸張し始め、経営を好転させた。さらに北海道ガスでは、大正七年事業拡張を行い、製司コークスの製造・販売を行って経営難を乗り切った(樽新 大12・6・3)。
表60のように、大正十四年末で三〇三四戸の需要家数(取付管装置戸数)に増加しているのはそのあらわれであろう。また表59にあるとおり、灯火用は大正四、五年をピークに減少していたが、十三年には熱用と灯火用が逆転している。