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経済警察・労政警察の始動

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 日中戦争全面化の事態を受け、総動員体制の整備が急速に進むのにともない、警察の関与する領域が拡大した。経済警察と労政警察の分野である。昭和十三年七月、内務省の指示を受けて、まず「経済警察の代行として特高課が主体」(樽新 昭13・7・4)となって発足し、ついで八月、経済保安課が新設され、札幌署にも経済保安係がおかれた。それは「各種産業の跛行的殷賑を招来するに至り、転業、転職、失業者の激増と、高物価に基く一般国民の窮乏化等に依る不平不満が漸次醞釀するの危険性が著しく認められつつある」(指導記録 第一輯)という判断からであり、その後も拡充されつづけた。この経済警察運用の協力機関として各警察署ごとに経済警察協議会がおかれた。札幌でも「市、商工会議所所員、市内経済諸団体代表約四十名出席物資の配給円滑、闇取引防止について協議」などしている(北タイ 昭15・1・17)。
 また、十四年末には経済犯罪処理の経済検事が新設され、札幌地裁検事局にも一人が割り当てられた(ほかに書記二人)。十五年九月には「検察当局と道庁とが緊密な連絡をとって経済事犯の取締を強化しやう」として、控訴院検事局管内の経済連合会議を開いている(北タイ 昭15・9・12)。
 経済警察がモノを統制したのに対し、ヒト=労働力の動員・配置という統制にあたったのが労政警察である。警察部には職業課と表裏一体の関係にある労政課がおかれ(昭14・11建築工場課を改変)、各警察署には労政係がおかれた。工場や鉱山の労働者に対しては産業報国運動の組織化を進め、それ以外の日雇労働者や仲仕などには各警察署単位の懇話会を開催することにした。十五年一月、札幌では六〇〇人から成る労働者報国隊を結成し、「愛国貯金と月四回禁酒励行」などを実践項目に掲げている(北タイ 昭15・1・16)。こうした経済警察・労政警察は一般民衆の生活や労働を監視・統制し、その機能によって治安維持の確保をめざすものであり、広義の特高警察とみることができる。