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「思想事犯簇生ノ傾向」

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 昭和十八年七月、札幌控訴院で開かれた思想検事会同に、札幌地裁検事局は『管内情勢報告』を提出している。冒頭の「概観」では「連続決戦体制ニ即応シ反日本的思想分子ノ跳梁ヲ完封スヘク邁進シテ居ル」として、検挙件数は手不足なために大規模な検事局に劣るものの、「現ニ捜査線上ニアリテ犯罪ノ嫌疑十分ナリト認メラルモノ多数存在スル」と述べる。「結語」でも「本道民ノ思想動向ニハ極メテ憂慮スヘキ事態存シ思想事犯簇生ノ傾向ニアル」と観測していた。具体的なものとして、札幌関係では、先の北海道農業研究会事件に関連して広谷俊二の検挙と、さらにそこから発展した「北大学生グループ(仮称)」に触れ、十七年六月の日本聖教会事件を詳述する。これは札幌新生教会伊藤馨牧師らを「長年ニ亘ル布教伝道ノ結果民心ヲ腐蝕シ国体観念ヲ希薄ナラシメタル罪責大ナルモノナリ」と断罪する。また、防諜関係でも「北大ノ学生中容疑朝鮮人学生ト交友中ノモノアリ厳ニ内偵中」としている。