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流言蜚語

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 道民の思想動向を「極メテ憂慮スベキ事態」とみなす論拠の一つに、再び増加してきた流言蜚語があった。札幌控訴院検事局では『大東亜戦争下に於ける流言の実例集』(昭18・7)をまとめているほどである。札幌関係では五件が収録され、そのうち陸軍刑法に問われた日本天主公教司祭戸田帯刀の事例をみると、自宅で「占領地が広まれば広まる程日本の国も困って来る之以上生活が不安になると国が乱れて来る」などと「放言」したというものである(起訴されるも無罪となる)。こうした厭戦的ないし批判的な言動を反国体的として取り締まったのは、特高警察や思想検事だけではなかった。憲兵の眼も光っていたのである。たとえば「大東亜戦争ガ起キテ特ニ米英ヲ鬼畜ダト云フガ夫レハ極端ダ、米英ノミガ悪イノデハナイ」などと、日本基督教団北海教区長の小野村林蔵札幌市立光星高女で語ったことが、憲兵隊の資料に残されている(憲兵司令部 七月中ニ於ケル造言飛語 昭19)。