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小樽新聞の記事

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 三月二十一日付『小樽新聞』に、「篠路学田一小作者」が「篠路村議諸氏へ」と題して投書しているが、そこには小作側の主張が次のように述べられている。すなわち、投書は彼等の入地以来の小作料値上げの経過を記した後、次のように述べている。
 然るに今回の契約更新小作料改定に当り、吾々小作人代表の会見を拒み、突如十五割の値上げを為し期間を三年と定めた。掲てゝ加へて賃貸規約の一部を改正し譲渡も転貸も認めず、又村有地居住以外の者には村長の承認する者以外は耕作し得ずといふ苛酷なる条件を付した。吾々には掌て一度だに小作料を納付せぬ事もなく土地耕作を怠った事もない。吾々が最初入地当時は、外耕地の払下げを受け得んには得られたが、一応小作地の開墾耕作に苦心し今日の耕地に漕付けたのであるが為め、吾々は総有る労苦を重ねる一方、村はその効果に浴し乍ら斯如き横暴な決議を以て吾々に臨むとは、パンを望んで石を得たに等しく、何たる矛盾であらう。(中略)村会は速かに非理横暴なる決議を撤回して、吾々弱者の窮状と今日迄の労苦を察し、温情味人間味ある契約を結ばれる様切望に堪へぬ。

 これに続いて、三月二十四日の同紙にも「篠路村円満生」が、「要するにこの問題は、桜井村長が村政刷新を期せんとせる結果、横暴頑迷な村議等は村長穽めのため、村有地小作料に搦んで今迄一円二〇銭の小作料を三円、実に十七割といふ法外な値上げを答申し、同案を強要して遮二無二議決したのである」と小作料問題の背景について述べている。そして、「一体公共団体が所有する土地を、他の個人地主の土地の如く引上ぐべきものではない」と、これを推進しようとする一部の村会議員を批判している。
 このように、学田地の小作料値上げ問題をめぐっては村当局と小作人との対立が先鋭化するのみならず、村理事者と一部村議との間にも亀裂が生じつつあった。さらに四月に入ると、村民の中に次のような動きもあらわれた。すなわち、三月末をもって満期を迎えた学田地の小作料を三円に値上げするという村会の決議を、桜井秀夫村長が実行しないのは「不都合」と判断した山本喜太郎等の村内有志は、四月十日に「約三百名の村民」が参加した村民大会を開催し、桜井村長の不信任を決議した。そして翌四月十一日、山本以下二〇人の実行委員は松尾豊次石狩支庁長を訪ねて大会決議文を手交するとともに、村内の部落区長一七人の連袂辞職書を提出し、村会の値上げ決議の正当性を一時間にわたって陳情した(北タイ、樽新 昭3・4・12)。
 ここにいたって、篠路村学田地の争議は、小作争議としての外観を呈しながらも、その本質はむしろこの問題を利用しての村内政治諸勢力による政争的様相をみせはじめたのである。まず、桜井村長は不信任決議の責任をとって四月十二日に辞任し、後任には横岳資行が就任した。さらに同年六月一日、桜井前村長糾弾の村民大会を主催した山本喜太郎が村会議員に当選した。このようにして、篠路村学田地の争議は次第に複雑な状況をみせはじめていった。