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山鼻尋常高等小学校の「開校五十年記念児童成績品及教育参考品展覧会」

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 近代アイヌ史のなかで、昭和戦前期はアイヌ民族の存在を際立たせる、各種のイベントが札幌市などで開催されたことに大きな特徴がある。こうしたイベントが市民のアイヌ認識の形成に影響を与えたことは言うまでもない。
 昭和三年に開校五〇周年を迎えた山鼻尋常高等小学校では、その記念事業の一環として同年十月十八日から三日間にわたり、「開校五十年記念児童成績品及教育参考品展覧会」を開催した(山鼻小学校 沿革誌)。この展覧会は同校児童の「書方」「木工」「図画」の各成績品の展示を主体として、札幌市内や北海道内の主要小学校、それに「内地各府県」の児童成績品なども加えて構成された。
 その第六室は「本道六市児童成績品室」に充てられたが、そこには量徳(小樽市)、弥生(函館市)、大成(旭川市)、成徳(室蘭市)、釧路第一(釧路市)の各市の尋常高等小学校などと並んで、白老第二尋常小学校の児童成績品が展示された。この小学校は「北海道旧土人保護法」を法的根拠として、明治三十五年に設立されたアイヌ小学校のひとつである。同校の児童成績品を展示に加えた理由は不明であるが、「内地各府県」とは異質な歴史的、文化的要素を内在した北海道とその教育を際立たせるうえで、アイヌ民族の存在を抜きにしては成り立ちえなかったことは確かである。