失業の都市に飢餓の農村、それにエログロ・ナンセンスの世相は、その結果として自殺者を大量生産する。つまり、不安と焦燥が現実生活から人々を逃避させてしまうからである。失業によるもの、凶作によるもの、どちらにしても生活難のコースは死へ通じる。
不景気に加えて未曾有の凶作といわれた昭和六年の全道の自殺者について道庁警務課で調べたところ、男性四四八人、女性二七五人で、未遂男性一一一人、女性一六七人を合わせると一〇〇一人にも達した。これは前年に比べ二〇〇人もの増加を示したという(北タイ 昭7・4・16)。
札幌市についてみるならば、昭和六年は男性三二人、女性二〇人の計五二人で、前年はそれぞれ二一人、二二人の計四三人であったから九人増加したことになる(札幌市統計一班)。この年十月二十四日、豊平川に投身自殺した女性がいた。札幌警察署の調べでは、千葉県出身の女給で、解雇されて行先がなかったからということがわかった(北タイ 昭6・10・27)。
同年の全道の場合の自殺者を年齢別にみると、二〇~三〇歳が最も多く、次いで三〇~四〇歳という具合である。原因は厭世が最も多く、病苦、精神疾患、貧困の順であった(北タイ 昭7・4・16)。