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札幌市立職業紹介所の「就職斡旋」活動

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 札幌市立職業紹介所では、「少年職業紹介要領」制定前年の十四年三月の小学校卒業生を対象に、学校長を通して就職希望者の調査を実施し、独自の「就職斡旋」活動に着手していた。この試みは「職業撰択ノ適否及就職ノ遅速ハ本人ノ将来ハ勿論産業上ニ及ホス影響甚大ナル」(札幌市公報 第六一号)という理由から行われたが、その背景には当時の上級学校への進学者の増加に伴う就職者数の減少で、若年労働力の確保に奔走していた実業界からの働きかけがあったものと思われる。
 「就職斡旋」活動の結果を集約した「小学校卒業生職業紹介成績表」に依拠して、当時の求人と求職状況の一端を紹介しておこう。それによれば、同年三月から五月までの札幌市内での全求人数は二二四人で、職種別では「小店員」が全体の四六・四パーセントを占め、これに「給仕」(六・七パーセント)が続いていた(同前)。
 一方、全求職者数は高等、尋常の各小学校の卒業者三七六九人中、六五人(一・七パーセント)に過ぎなかった。この数値には「家業見習」のようなケースは算入されていないので、当時の小学校卒業者の就職実態を正確に反映しているとは言えない。職種別では「給仕」希望者が圧倒的多数を占め、全体の六三・一パーセントに達し、これに「小店員」希望者(一五・四パーセント)が続いていた。しかし、実際の就職者数は六五人中三八人であった。その理由は同職業紹介所が指摘したように、「求人数ニ比シ求職者甚タ僅少ナルノミラス需給両者ノ条件」が一致を見なかったためである(同前)。
 札幌市役所と同職業紹介所は昭和二年一月、『職業指導のお話』と題するパンフレットを作成し、「聯絡小学校」の卒業予定者全員に配付した(北タイ 昭2・1・27)。これは職業紹介所での「職業指導」の概要を周知するとともに、それへの理解を深めさせることを目的としたもので、そこには「何故職業指導が必要であるか」「職業指導とは何んなことをするか」「適性検査とは何んなことをするか」などが平易に記されている(札幌市公報 第一〇一号)。