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「少年職業戦士」の職場体験談

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 昭和十六年五月十一日付朝刊の『北海タイムス』紙上には、同年三月に小学校を卒業し、札幌市内の企業などに就職した「小さな職業戦士達」の職場体験談が掲載されている。これは札幌国民職業指導所が主催した「職場の体験を語る会」の記録であるが、当時の少年少女の「職域奉公」の実態を、当事者の「肉声」を通して浮き彫りにできる貴重な史料である。その一部を紹介してみよう。
 「小さな職業戦士達」の業務内容を見ると、札幌駅に勤務した少年は「駅構内の清掃と先輩の人達へのお茶を出す」こと、丸善書店の少年は「お客さんの所へ注文品を届ける」こと、帝国製麻の少女は「織場で反物を織る」ことが日常業務であった。職場での「楽しい事」では、鉱山機械の製作・販売をしていた工成舎の少年は「僕は図工見習として入って居りますが、一枚の図面でも出来上った時」がそれで仕事の充実感を語っている。また、藤屋鉄工場の少年は「昼の弁当を喰べれるのが一番嬉しい」として、本音を打ち明けている。
 逆に「辛い事」では、鉱山や土木関係の機械を製造・販売する中山機械の少年は「工具類の名称の判らない」こと、丸善の少年は「品物を官庁や会社へ届けに行っても配達する人が判らず、他の人にきいてもよく教へてくれない人が」いることなど、業務に直接関わる現実的な悩みをそれぞれ挙げている。
 職場選択の理由では、北海道庁の少年は「家で中学校へ入れてくれないので、自分で働きながら勉強しようと思って道庁へ入りまして、今夜間中学校へ入って居ります」というように、自己の向学心を満たすためであり、工成舎の少年は当時、「時局産業」といわれた「鉱山方面の重要性」に着目した。将来の希望では、札幌駅の少年は「御国のために一生懸命に働き、将来は駅長」、藤屋鉄工場の少年は「立派な国のためになる職人」を目標として掲げているが、それにはあくまでも「御国のため」という大前提が存在していた。