ビューア該当ページ

印刷技術の発達

1032 ~ 1033 / 1147ページ
 出版界の興隆の影には、印刷技術の発達があった。特に地の利を得ている札幌は「新しい技術や自家用の自動鋳造機を入れたりして、地方町村の郷土史などをはじめ、相当に手広く全道を手におさめてたくましい活躍」をしていた(北海道印刷のあゆみ)。開道五十年記念北海道博覧会や国産振興博覧会を契機に、郷土史の刊行が増加したことは前述した。印刷技術の発達は地元での印刷を可能にしたが、『北見郷土史話』(網走発行)、『釧路郷土史考』(釧路発行)等は札幌で印刷が行われている(北海道出版小史)。また、郷土史の他に記念絵葉書や写真帳の刊行も増加した。印刷業者は写真印刷や色刷り印刷の必要に迫られ、色刷輪転機など新しい印刷機械を導入していった。
 工場数自体にはあまり変化は見られないが(表13)、新機械の導入による技術の向上、製本業者の増加(市史第三巻では二社)など、出版社の出現と相俟って出版界は確実に興隆していった。しかし、戦時下のあらゆる統制は印刷業界にも及んだ。昭和十六年十一月、日本印刷文化協会北海道支部が設立した。これはその後、十九年の企業整備により解散し、新たに北海道印刷業統制組合が生まれた。
表-13 戦前期の印刷・製本・製紙工場
名称所在地創立年
北海石版所北2西3明26年2月
陽明堂印刷所南1西1明26.5
野澤活版所北1西1明29.4
山藤印刷株式会社南2西6明29.9
北海タイムス社工場大通西3明34.8
赤心堂高橋印刷所南2西2明37.1
文栄堂印刷所北1西3明38.4
大畑印刷製本工場大通西3明40.7
小林製本所南1西5明42.5
三田印刷所北3西1明43.3
黒田活版製造所北3西2明43.7
西村印刷所南1西4明43. 12
札幌製本所北1西2明45.5
中西写真製版印刷所大通西5大元.6
岡本博文舍南2西8大 5 .5
札幌印刷株式会社北1西2大 5 .5
山浦印刷所北1西3大 5 .9
深宮活字製造所大通西8大 7 .8
寺西印刷工場南2西4大 7 . 11
藤井製紙場大通東8大 7 . 12
藤田製本所南2西2大 8 .1
上野活版製造所南2西5大 9 .2
紺谷印刷所南2西5大10.1
其水堂印刷所南2西5大10.5
松田製本所大通西2大10.7
石川製本所南1西5大11.3
岩橋印刷所大通西9大11. 12
福原印刷所南1西9大12.3
文昭堂印刷所北1西6大13. 10
須田印刷所北2東1大13. 12
札幌毎日新聞社工場南8西4大14.2
開林堂製本所北7西5大15. 12
北海新報社工場南2西6昭 2 .2
辻印刷札幌工場南2西7昭 2 .8
昭和製本所北1西2昭 3 .5
上方屋印刷所北2東2昭 3 .9
昭文堂製本所南1西6昭 3 . 10
博光社印刷工場大通西6昭 3 . 11
札幌商工人名録』(昭8)より作成。