出版界の興隆の影には、印刷技術の発達があった。特に地の利を得ている
札幌は「新しい技術や自家用の自動鋳造機を入れたりして、地方町村の郷土史などをはじめ、相当に手広く全道を手におさめてたくましい活躍」をしていた(
北海道印刷のあゆみ)。開道五十年記念
北海道博覧会や
国産振興博覧会を契機に、郷土史の刊行が増加したことは前述した。印刷技術の発達は地元での印刷を可能にしたが、『北見郷土史話』(網走発行)、『釧路郷土史考』(釧路発行)等は
札幌で印刷が行われている(
北海道出版小史)。また、郷土史の他に記念絵葉書や写真帳の刊行も増加した。印刷業者は写真印刷や色刷り印刷の必要に迫られ、色刷輪転機など新しい印刷機械を導入していった。
工場数自体にはあまり変化は見られないが(表13)、新機械の導入による技術の向上、製本業者の増加(市史第三巻では二社)など、出版社の出現と相俟って出版界は確実に興隆していった。しかし、戦時下のあらゆる統制は印刷業界にも及んだ。昭和十六年十一月、
日本印刷文化協会北海道支部が設立した。これはその後、十九年の企業整備により解散し、新たに
北海道印刷業統制組合が生まれた。
名称 | 所在地 | 創立年 |
北海石版所 | 北2西3 | 明26年2月 |
陽明堂印刷所 | 南1西1 | 明26.5 |
野澤活版所 | 北1西1 | 明29.4 |
山藤印刷株式会社 | 南2西6 | 明29.9 |
北海タイムス社工場 | 大通西3 | 明34.8 |
赤心堂高橋印刷所 | 南2西2 | 明37.1 |
文栄堂印刷所 | 北1西3 | 明38.4 |
大畑印刷製本工場 | 大通西3 | 明40.7 |
小林製本所 | 南1西5 | 明42.5 |
三田印刷所 | 北3西1 | 明43.3 |
黒田活版製造所 | 北3西2 | 明43.7 |
西村印刷所 | 南1西4 | 明43. 12 |
札幌製本所 | 北1西2 | 明45.5 |
中西写真製版印刷所 | 大通西5 | 大元.6 |
岡本博文舍 | 南2西8 | 大 5 .5 |
札幌印刷株式会社 | 北1西2 | 大 5 .5 |
山浦印刷所 | 北1西3 | 大 5 .9 |
深宮活字製造所 | 大通西8 | 大 7 .8 |
寺西印刷工場 | 南2西4 | 大 7 . 11 |
藤井製紙場 | 大通東8 | 大 7 . 12 |
藤田製本所 | 南2西2 | 大 8 .1 |
上野活版製造所 | 南2西5 | 大 9 .2 |
紺谷印刷所 | 南2西5 | 大10.1 |
其水堂印刷所 | 南2西5 | 大10.5 |
松田製本所 | 大通西2 | 大10.7 |
石川製本所 | 南1西5 | 大11.3 |
岩橋印刷所 | 大通西9 | 大11. 12 |
福原印刷所 | 南1西9 | 大12.3 |
文昭堂印刷所 | 北1西6 | 大13. 10 |
須田印刷所 | 北2東1 | 大13. 12 |
札幌毎日新聞社工場 | 南8西4 | 大14.2 |
開林堂製本所 | 北7西5 | 大15. 12 |
北海新報社工場 | 南2西6 | 昭 2 .2 |
辻印刷札幌工場 | 南2西7 | 昭 2 .8 |
昭和製本所 | 北1西2 | 昭 3 .5 |
上方屋印刷所 | 北2東2 | 昭 3 .9 |
昭文堂製本所 | 南1西6 | 昭 3 . 10 |
博光社印刷工場 | 大通西6 | 昭 3 . 11 |