敗戦により戦時体制はすべて解除されたが、この間に道外刑務所の約四〇パーセントが損傷を受け、さらに、その後の収容者の増加も重なって各刑務所は過剰収容の様相を呈した。そこで法務省が中心となり、「受刑者労務の国家的利用」に関して関係省庁や北海道庁との懇談会や協議が重ねられた結果、GHQの助言もあって二十三年六月、通常の通役や泊まり込み形態による構外作業組織とは別に、大規模な構外作業のための「北海道開発名誉作業班」が設置されることになった。性格及び主たる目的は、北海道庁などが発注する土木工事に、「名誉作業班処遇規程」に基づいて、①全国の刑務所から優秀受刑者を厳選して派遣し、②作業成績により刑期を短縮して、原刑務所復帰とともに仮釈放させるというものであった(武田武久 北海道開発名誉作業班)。
二十三年度から、札幌のほか旭川・帯広・網走・釧路・函館の道内各刑務所が主管する出役場所として、道内各地で初年度二七カ所・二年目三一カ所・三年目二三カ所が計画され、延べ八〇九五人の受刑者が各種土木工事に従事し、札幌刑務所が主管した出役場所及び出役人員は表13のようであった。多くは僻地に設置されたが、当時、札幌刑務所で編成された受刑者による劇団(SK劇団)が、慰問のため道内の名誉作業班をくまなく巡回興行し、受刑者からはもちろん村民からも拍手大喝采を浴びたという(重松一義 北海道行刑史)。
表-13 北海道開発名誉作業班出役状況(札幌刑務所主管分) |
年度 | 出役場所 | 事業の内容 | 出役人員 |
昭23年度 | 札幌郡白石村 | 厚別川改修工事 | 150人 |
空知郡栗沢村 | 清真布川新設放水路開削 | 130 | |
岩見沢市西川向 | 幾春別川上流部新水路開削 | 100 | |
空知郡奈井江村 | 三井奈井江鉄道工事新設道路 | 250 | |
岩内郡小沢村 | 小沢村中平十一号開拓道路 | 100 | |
有珠郡壮瞥村 | 昭和新山噴火による新道開削 | 100 | |
夕張市清水沢 | 清水沢、遠幌間隧道工事 | 150 | |
勇払郡厚真村 | 厚真川改修工事 | 150 | |
虻田郡豊浦町 | 道路改良工事 | 100 | |
沙流郡平取町 | 道路改良工事 | 100 | |
昭24年度 | 石狩郡当別町 | 開拓用簡易軌道工事 | 100 |
夕張郡遠幌 | 道路改良工事 | 150 | |
空知郡栗沢村 | 清真布川改修工事 | 150 | |
札幌郡白石村 | 厚別川改修工事 | 150 | |
有珠郡壮瞥村 | 道路改良工事 | 200 | |
沙流郡門別村 | 道路改良工事 | 100 | |
白老郡白老村 | 道路改良工事 | 100 | |
勇払郡厚真村 | 厚真川改修工事 | 150 | |
岩見沢市西川向 | 幾春別川改修工事 | 100 | |
夕張郡長沼村 | 水温上昇工事 | 100 | |
昭25年度 | 札幌市白石町 | 厚別川・野津幌川改修工事 | 100 |
空知郡北村 | 排水新設工事 | 100 | |
空知郡幌向村 | 排水新設工事 | 100 | |
夕張郡長沼村 | 甫六号地の剣淵川改修工事 | 100 | |
勇払郡厚真村 | 厚真川改修工事 | 150 | |
沙流郡門別村 | 道路改良工事 | 100 | |
虻田郡豊浦町 | 道路改良工事 | 100 | |
空知郡幌加内村 | 道路改良工事 | 200 |
重松一義『北海道行刑史』所載表より抜粋,一部加工。 |
折から行政整理や企業整備問題が全国的に浮上していた。昭和二十四年には「緊急失業対策法」が制定され、地方自治体による公共事業との整合性の問題も派生した。全国各刑務所における過剰収容状況の改善や、通常の構外作業場の充実なども受けて、行刑史上も画期的な開発名誉作業班は、昭和二十五年度をもって廃止された。