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新学制実施準備協議会の活動

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 小学校に比較して、新制中学校の設置は容易ではなかった。新制中学校は、全日制・男女共学学区制で、初等教育修了者の誰もが無試験で進学する単線型の義務制三年間の中等教育機関を志向した学校である。設置が容易でなかった理由は、第一に前身校を持たず独立校舎もない状態でのスタートであったこと、第二に教育の内容が、戦前の国民学校という下からの規定と、戦前の旧制中学校・高等女学校という上からの規定を受け、両者にはさまれたものであったこと、などである。
 新制中学校設置の動きは対日米国教育使節団報告書からはじまるが、日本側の具体的な動きは昭和二十一年十一月十一日に文部省より出された「義務教育年限延長に伴ふ準備資料調査について」からであった。この通達は、文部省からすれば単なる準備資料調査に過ぎなかったが、地方や機会均等を求める運動団体には、大きな影響と刺激を与えた(赤塚康雄 戦後教育改革と地域)。札幌市では、この調査をうけて「下級中学に一校、二校、女子校の三校をあてて、なお六〇学級不足になるが、市内の中等学校はそれぞれこの三月卒業生をだし、一年生を採用しないから、そこに生ずる空学級にこれをあてはめることにする」予定にした(道新 昭22・1・24)。二十二年二月五日、文部省は視学官会議において新学制実施方針を打ち出した。
 六・三制の新学制にあたって地域社会による独自な学制改革を促し、地方当局に意見を具申するために設けられたのが、新学制実施準備協議会であった。これはCIE教育課が文部省に強く要請したものである。札幌市では、二十二年三月下旬に「国民学校、中等青年学校五十二校からあげられた校長、教員各二名父兄二名の協議員」から組織され、三月二十六日に第一回会合を行った。会では、北海道実施準備協議会に出席する協議員となる正副議長を決め、「各校一名計五十二名からなる小委員会を構成」することにした(道新 昭22・3・31)。四月十日の第五回の協議会で、市の新制中学校配置の具体案ならびに要望要項を決定した(道新 昭22・4・11)。その内容は次のとおりである。
◇具体案
一、義務制で新制中学の一年生となるべき三月国民学校初等科を卒業した男女三千七百四十八名に均等な中学教育をさずけるため―カッコ内は設置される学級数で一学級の定員約六十名―とくに一高(二一)、二高(二二)、女子校(二一)の三校を独立中学校として全面的に切り換え、全員をいずれかの学校に収容、男女共学とする。
一、新制中学二年生となる高等科一年修了者など二千百五十一名のうち男子一千四十名は一中(三)二中(三)市中(三)札工(七)に、女子一千百十一名は一高(五)一商(四)女子校(九)に収容し、男女共学は行わない、同じく三年生となるべき生徒六百六十二名のうち男子三百二名は一中(二)二中(二)市中(一)に、女子三百六十名は庁立(三)市立高女(三)に収容、これも男女別々とする。
一、藻岩校は二高の分校とし白川校委託の予定である。
◇要望要項
一、すみやかに学校長と事務官とを決定、人事交流の円滑をはかること、教職員の配置は経歴のみにとらわれず実力を重視すること。
一、交流は本人の希望を考慮すること(道庁方針は十五学級以上一名二十五学級以上二名)。
一、新制実施によつて小学校教育に欠陥を生ぜしめざること。
一、その他。

 すなわち、国民学校高等科単置校である市立第一国民学校、市立第二国民学校、市立女子国民学校の三校を新制中学校に切り換えて新制中学校一年を収容し、旧制の中等学校である庁立札幌第一中学校、庁立札幌第二中学校、庁立札幌高等女学校、庁立札幌工業学校、市立高等女学校、市立中学校の六校に新制の第一中学校から第六中学校を併置し、新制中学校二、三年を収容するという案であった。この案のままの形で、市教学課の案が完成し、市会で可決成立した(昭22二定会議録)。