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GHQの教育の民主化とスポーツ

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 昭和二十年八月のポツダム宣言受諾により、日本の戦時体制下の教育は大きな転換を迫られた。十月二十二日、GHQは政府に「日本教育制度ニ対スル管理政策ニ関スル件」を指令し、民主化と非軍事化を基調とする対日占領教育政策の方針を明らかにした。二十一年三月に出された「第一次アメリカ教育使節団報告書」は、基本線においてこの流れをふまえたものであり、新教育の内容を具体的に打ち出したものであった。
 報告書によれば、これまでの日本の教育を「大衆と少数特権階級とによる別々の教育を施し、極端に中央集権化された十九世紀型の教育」として批判し、新日本の教育改革は教育の機会均等、単線型学校制度、近代市民の教育を目的とする教育内容、民主的な教育課程の編成、地方分権にもとづく教育委員会の設置、社会教育の拡充など、行政・制度・教育内容全般にわたって改善されなければならないとしている。報告書の「体育の改善」の章では、スポーツについて次の四点が指摘されている。
一、スポーツマンシップなる共同の精紳の価値認識の必要性。
二、家庭・近隣で行えるスポーツ・ゲームを発達させること。
三、非軍事的競技団体の活動再開の奨励。
四、女子体育指導者の養成と女性のスポーツ参与の拡大。

 一方、文部省はGHQの教育指令が出される前年の九月に、「新日本建設の基本方針」を公表し、その中でスポーツについては「大イニ運動競技ヲ奨励シ純正ナルスポーツノ復活ニ努メ之カ学徒ノ日常生活化ヲ図リ以テ公明正大ノ風尚ヲ作興シ将来国際競技ニモ参加スルノ機会ニ備ヘ運動競技ヲ通シテ世界各国ノ青年間ニ友好ヲ深メ理解増進ニ資セシム」ことを指示した。このように、文部省が戦後間もない時期に「スポーツの生活化」を示唆したことは注目されるが、社会体育(スポーツ)施策を展開するうえで、教育使節団報告書におけるスポーツ重視は大きな意義をもったといえよう。