昭和二十年代の札幌で注目されるのは療養者たちの動向である。二十三年十月に創刊された『波紋』は、国立札幌療養所詩部会の発行で内田十四彦、中島金二郎、五十嵐久などが中心になり二十八年まで活動した。二十五年五月創刊の『序奏』は国立北海道第二療養所序奏詩話会の発行で高橋勇、後藤登喜雄、佐々木逸郎らが中心になった。二十九年五月に創刊された札幌中央病院の『雑草園』は吉田稔、薩川益明らが中心であった。昭和二十年後半になると肺結核の治療が進むにつれて長期療養所が減少したが、療養所出身の詩人たちが中心になって北海道詩人集団を作り、三十年九月に『先列』が創刊された。『雑草園』の吉田稔、薩川益明らが呼びかけて鷲巣繁男、山田順三、松岡繁雄、富樫酋壱郎、江原光太などが作品を発表した。その後も幌南病院で療養中の古川善盛が中心となり三十一年二月に『扇状地』が創刊された。