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四十年代の劇団

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 昭和四十年代に入って、四十四年を頂点とする大学紛争が起こり、演劇においてはリアリズム演劇、新劇に反旗を翻すアンダーグラウンド演劇、小劇場演劇が興った。札幌で小劇場の動きが大きな盛り上がりを見せるのは五十一年を待たねばならないが、学生運動の全国同時性から、大学演劇には早くから影響が現れた。例えば北大演研は、四十五年から戦後連綿と続いた路線とは明確に異なる傾向を選択する。また一般演劇においても、作家を主軸とする劇団活動や、プロセニアム(額縁舞台)を前提としない空間選択が行われるようになった。以下、四十年代に創立した劇団の状況を記す。
劇団青の会 四十年四月創立 代表者-本山節彌
高校演劇ですぐれた創作劇をうみだしている本山を座付作家・演出家として、主にその作品上演を目的に誕生した。「おもしろくて、わかりやすくて、生き生きとした舞台」(「オホ-ツクの女」公演パンフレット)をめざして、女優・菅原澄子、プロデュ-サ-・小南武朗、舞台監督・太田明彦が活動。幅広い観客を得たが、四十六年十二月解散。
主な舞台-『日本刀』『ネオ・ホッカイドウ』『あめりか礁物語』『どさんこ花子』(前出)
 
劇団風車 四十二年七月創立 代表者-梅津齊
劇団四季に所属し帰札した梅津が、劇性の回復、語られる言葉の追求をめざし、あらかじめ設定した国内外三十余の作品の研究上演を目的に結成。喫茶店での詩の朗読などを含む実験的な活動を展開した。五十四年三月解散。
主な舞台-『動物園物語』『班女』『イノック・ア-デン』『女中たち』『ダム・ウェイタ-』『犬神』『宮城野』
 
演劇同人城 四十二年十月創立 代表者-佐々木逸郎
NHK札幌放送劇団の矢木原敬、扇谷治男、高木孔美子が、年一回の舞台公演にあきたらず、より広く観客と出会う場と機会を求め結成した。劇作家や舞台美術家が加わった。すすきののナイトクラブを昼間利用で拠点とし、飲食つきで大人が楽しめる演劇を目指した。店の改装のため無期休演。
主な舞台-『ジ-クフリ-ト』『冬の影』『シドレ-夫人の恋人』『タイピストと虎』
 
演劇集団寒流 四十三年十月創立 代表者-木村功、糸井忠。
在札の劇作家田中和夫(札幌文学同人)の戯曲上演を目的に、北星男子、女子高校演劇部OBで結成された。「風土の中の人間」「歴史の中の北海道」を掘り起こす田中のオリジナル作品を上演するが、糸井の事故死などによって四年で活動を休止。
主な舞台-『地の涯で』『灯りが消えても』『残響の北』

 このほか、四十一年に鈴木八雄等による「峠」が発足し、旗揚げの『海の女』など年一~二本の公演のほか、試演会、学校・施設公演を行っている。四十四年十一月には、学生演劇連合を志す菊地智晴等の「創造劇場」が『授業』で旗揚げし、同月、福沢千比呂主宰「札幌自由劇場」が劇団の枠組を否定する立場で活動をスタートし、『蜘蛛の糸』『再三改三五大切』『マリアの首』など異色の題材を取り上げた。組織、空間、作品と表現、活動内容など、あらゆる面で札幌の演劇に大きな変動の波が寄せていた。