戦後、市内の寺院数が大幅に増加している。戦時期までの寺院数は三〇カ寺前後と推定されるが、昭和二十三年四月末の寺院数は、以下のように六一カ寺となっていた(昭23要覧)。
真宗 二五 日蓮宗 一〇 禅宗 九 真言宗 九
浄土宗 三 本門仏立宗 二 天台宗 二 単一 二
真宗は大谷派、本願寺派、興正派、高田派、仏光寺派などであるが、この僅かの期間に寺院数は倍増していたことになる。この間、宗教団体法の廃止などによって寺号公称が容易となり、説教所・教会から寺院への引き直しがなされていたからである。十四年では市内に説教所が五三カ所、教会が一七カ所存在していたが(市史第四巻)、その後も増え続けており、これらの説教所・教会が寺号公称に向けて動いていた。特に二十一、二年に寺号公称が多くなされている。
二十一年は真宗大谷派で円照寺(旧藻岩教会、大通西23)、信証寺(上山鼻教会、南34西10)、曹洞宗で龍興寺(南4西27)、真言宗で地蔵寺(智山派地蔵説教所、大通西19)、不動姫寺(醍醐派不動姫布教所、南7西16)、上宮院興隆寺(智山派上宮教会、北16東3)、日蓮宗で妙典寺(立正教会、南16西7)などがあり、二十二年は本願寺派で大心寺(幌西説教所、南11西17)、瑞正寺(山鼻説教所、南14西8)、真照寺(苗穂説教所、北3東10)、日蓮宗で最上寺(顕信教会、南6西7)などがあった。
また、戦後は新しい宗派、教団の寺院も開設されるようになる。例えば、二十一年に真宗三門徒派の照願寺(豊平1-2)、本門仏立宗の信廣寺(北1西28)、二十三年に日蓮正宗の日正寺(北10西1)、妙法宗の妙法寺(北8東6)、二十四年に真宗木辺派の慈光寺(錦織寺札幌説教所、南2西9)などであった。単立では薬師寺(南10西6)が創設されている。
この時期の市内の正確な寺院数は不明であるが、二十三年は『北海道市町村勢要覧』(昭25)によると七〇カ寺となっており、また、二十五年二月現在で札幌仏教会に参加していた寺院は八一カ寺であった(札幌市史編集史料 宗教 文資)。戦時期の約三〇カ寺が、二十五年までには八一カ寺と大幅に増加していたことになる。