板垣市長は五十九年九月十三日、札幌市長期総合計画審議会に対して札幌二一世紀構想の策定について諮問した。審議会は「二一世紀構想専門部会」と北海道大学教員七名のワーキンググループを設置して検討を行った。六十一年六月三日、同審議会は答申をまとめ、市長に提出した。この答申を受けて、市は「札幌二一世紀構想」を策定した。
「札幌二一世紀構想」は、札幌が日本列島の「北の拠点都市」としての役割を一層高めること、個性的で活力に満ちた都市を創造することを目標とし、その目指す方向を「ノーザンクロス・プラン」と呼んだ。これは、ノーザンクロス、すなわち北十字星に、道内や北方圏諸都市との連携を図りながら世界に結ぶ交流の拠点と、北の美しい自然環境と心豊かな市民性のイメージを託そうとしたものであった。それは①世界に結ぶ、②北の都市機能を創造する、③先駆的な実験を継続する、の三つの基本方向に集約され、これらを具体化する基本的方策として四つの柱が設定された(表9)。この構想の実現のために、①都市問題解決への積極的対応(都市型公害・青少年非行・犯罪や新たな社会病理に対する個人と社会全体との調和を図るきめ細かなシステムづくり)、②市民参加の促進と民間活力の活用(市民、行政、企業の役割分担と有機的連携のシステムづくり)、③新しい時代に即した行財政運営の推進(簡素で効率的な行財政運営の推進と自主財源に裏付けられた創意と工夫に基づく地方自治の確立)、の三つの社会・行政システムの見直しが提言されている(札幌二一世紀構想)。
表-9 「札幌二一世紀構想」の基本的方策 |
1.交流の機能を高める | |
① | 国際都市づくり(南方諸都市も含めた国際交流の拡充、コンベンション機能の充実、国際都市としての都市環境整備などによる「国際都市さっぽろ」の実現) |
② | 高度情報拠点都市づくり(情報通信基盤の先行的整備、情報の創造・加工・蓄積・発信機能の高次化、新情報都心など地域ニューメディア拠点の形成、情報及び情報通信技術の活用) |
③ | 新しい生活・芸術文化を創造する都市づくり(新しいライフスタイルの研究開発、芸術文化鑑賞施設の充実、芸術の森の整備、芸術系大学の設置などによる「芸術文化都市さっぽろ」の実現) |
2.産業の競争力を高める | |
① | 北の英知を産業化し、独特な札幌の経済構造を生かす(アパレル、家具、木工品等を「さっぽろブランド」として主導的産業化する、サービス産業の質的強化、ソフトウェア、システム開発などの新産業の育成) |
② | 研究開発の機能を強化する(地場企業への先端技術導入、産学官連携、異業種交流、研究開発機関・企業の集積・立地、札幌テクノパークのようなハイテクパークづくり) |
③ | 産業活動の担い手を育てる(技術開発を進める創造的人材の育成など) |
3.伸びやかな札幌人をはぐくむ | |
① | 自己開発を促す環境を整備する(生涯教育や創作的な活動の発表・交流の場の拡大) |
② | 家庭や地域社会の教育機能を高める(総合家庭施策、地域ぐるみの子ども健全育成、福祉教育) |
③ | 高齢期の生活を明るくする(就業体制の整備と生涯教育の充実、地域包括医療システムづくり、在宅福祉の充実) |
4.北の魅力と快適性を高める | |
① | 教育と健康づくりに自然を生かす(野外教育の推進、近郊山岳丘陵地・水辺のレクリエーション的活用) |
② | 冬季生活を楽しくする(屋内公園・全天候型スポーツ施設の整備、都市景観づくり、新しいスポーツ・レクリエーションの開発、新交通システムの開発、ゆとりある住宅や市街地空間の形成) |
③ | 活気にあふれ、美しく洗練された都市空間をひろげる(コンベンションゾーンやハイファッションゾーンなどの個性的街区形成と都市美の創出、オープンスペースの創出と緑化、緑の都市軸づくり) |