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長期総合計画のなかの都市計画

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 札幌市では、昭和四十六年策定の札幌市長期総合計画、それの実行計画である「五年計画」、五十一年策定の新札幌市長期総合計画と三度の五年計画、六十三年策定の第三次札幌市長期総合計画と三度の五年計画、平成十二年策定の第四次札幌市長期総合計画と五年計画がある。それらのなかで土地利用に関する都市計画規制がどのように描かれているか、長期総合計画を中心に見てみよう。
 昭和四十六年策定された長期総合計画策定の基本方針は、二〇年後を見据えた長期的な視野から計画的かつ効果的な都市づくりを推進するための基本的目標であるという。そして周辺地域を含んだ広域的な都市計画区域として一体性のある計画をたてるべきとする。そのため第二編「都市基盤の整備」の第一章「計画的な土地利用の推進」では、「広域的な土地利用の展開」、「多核心的都市形態への誘導」、「基礎生活圏としての住区構想の推進」を土地利用の基本方針とする。第三節の土地利用計画では、まず住宅地、商業地、工業地、流通・運輸関連業務地、自然緑地および農業地に分類する。そして住宅地を高度利用住宅地区、一般住宅地区、低層住宅地区に分け、商業業務地を都心商業業務地、住商複能地区、一般商業地区に分け、工業地を専用工業地区、一般工業地区に分け、それぞれの地区に対する施策を述べる。例えば、住宅地についてだけ紹介すると、高度利用住宅地区は、都心からほぼ三キロメートル圏内の市街地中心部を指し、職住接近と土地の高度利用を基本として、中高層住宅を中心とした比較的人口密度の高い住宅地とする。一般住宅地区は、都心からほぼ六キロメートル圏内の既成市街地や周辺の大規模住宅団地およびその隣接地域とし、一戸建て住宅と中高層住宅の混在した住宅地とする。低層住宅地区となる手稲、新琴似、篠路、厚別、藤野などの新しい住宅地や今後開発される周辺地域は、敷地にゆとりのある一戸建て住宅を主体とした比較的低密度の住宅地とするとある。さらに第四節「住区と人口配分計画」では、住区計画の推進について述べる(長総)。
 この長期総合計画は、諸般の変化により五年計画を一期実施しただけで新たな長期総合計画を策定することになった。
 五十一年策定された新長期総合計画では、第二章「豊かな自然と調和したまとまりのある街に」には、第一節「適正な都市規模に誘導する」、第二節「まわりの市町村と機能を分かちあう」、第三節「豊かな自然を保全して緑にかこまれた市街地を形成する」、第四節「まとまりのある都市空間を構成する」とある。都市空間については、広域的土地利用の展開、地域社会単位の段階構成、多核心都市形態への誘導を基本方針とする。これらのなかで、周辺地域を含む広域的な人口配置や土地利用を考慮し、市街地の発展の方向を中心市街からの通勤時間四五分に想定する。また土地利用計画では、前計画同様に住宅地、商業業務地、工業地、流通・運輸関連業務地に分類する。そして住宅地を高度利用住宅地帯、一般住宅地帯、周辺住宅地帯に分け、商業業務地を都心商業業務地、副都心商業業務地、生活都心および地区中心商業地に分け、それぞれの地区に対する施策を述べる。さらに住区計画をふまえた地区整備基本計画を作成するとある(新長総)。
 六十三年策定の第三次長期総合計画では、第一章が「都市空間計画」であり、その「施策」を、「都市環境緑地の保全・活用」、「快適な市街地環境の創出」とする。基本方針は、自然緑地の保全・活用と緑にかこまれた市街地の形成、国際都市にふさわしい高次な都市機能と風格ある魅力的な都心空間の創出、副都心、地域中心核への機能の集積や魅力の向上、都心周辺および都市高速鉄道沿線等における空間の高度利用の促進である。その「快適な市街地環境の創出」のなかの「用途別土地利用」では、やはり住宅地、商業業務地、工業地、流通・運輸関連業務地、温泉・保養地に分類し、住宅地を高度利用住宅地帯、一般住宅地帯、周辺住宅地帯に分け、商業業務地を都心商業業務地、副都心商業業務地、生活都心(地域中心核)に分け、それぞれの施策を述べる。住区計画、地区計画とすすめられた地域社会単位の整備は、「快適な市街地環境の創出」のなかの市街地整備の項で、公共公益施設について、必要な整備をすすめるとだけ登場する(三長総)。
 平成十二年策定の第四次長期総合計画では、それまでの土地利用計画とはまったく違ったものになった。第五章の「魅力と活力を高める都市空間と交通体系の実現」で、市街地の外延的拡大の抑制を基調としつつ、多中心核都市構造の必要性と都心周辺部などでの居住促進を強調した(概要 平12)。また公園や森林などのオープンスペースのネットワーク化についてその意義や整備目標などを提示する(四長総)。
 多中心核都市構造とは、都心以外に高次都市機能拠点広域交流拠点地域中心核を設定し、各種機能の集積状況、交通結節性、地理的位置関係などをふまえて配置するものである。高次都市機能拠点とは、国際的、広域的な影響をもって札幌の魅力と活力の向上を先導する機能で、札幌ドーム周辺や札幌テクノパーク、定山渓など八カ所である。広域交流拠点とは、市内だけでなく、石狩市、江別市、北広島市などの隣接諸都市も後背圏に持ち、多くの人々の日常生活を支える機能が集積する拠点で、厚別副都心、麻生・新琴似、手稲の三カ所である。地域中心核とは、区やそれに準じた地域の日常生活を支える拠点で、北二四条、篠路、光星、栄町、白石、大谷地、平岸、月寒、清田、澄川、真駒内、琴似、宮の沢である(四長総)。
 以上のように、前述したような土地利用計画がそれぞれの長期総合計画に盛り込まれ、それらが、街づくりの中心として位置づけられている。特に多核心型都市の建設をめざし、第一次と第二次の長期総合計画では、その誘導を方針としたが、第三次では、副都心と生活都心(地域中心核)の整備、第四次では、多中心核都市構造として発展させている。