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軽工業中心の業種構成

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 戦前・戦後を通じての札幌工業の特徴は、第一に重化学工業が少なく、軽工業の比重が高いこと、第二に軽工業のなかでは食料品が最多で、次いで出版・印刷、木工・家具などがあり、繊維の比率は小さいこと、第三に重化学工業では金属、機械が相対的に高い比重をしめること、などであった。政令指定都市移行後の札幌工業はいかなる特徴をもっていたのだろうか。
 表7によると、まず、工場数合計はこの時期に横這いであった。業種別にみると昭和四十七年(一九七二)には一位食料品、二位金属製品、三位家具・装備品、四位出版・印刷・同関連品(以下では出版・印刷と略)、五位一般機械器具の順であったが、平成十二年(二〇〇〇)には一位出版・印刷、二位金属製品、三位食料品、四位家具・装備品、五位一般機械器具という順になっている。食料品、木材・木製品、家具・装備品、パルプ・紙・紙製品、窯業・土石製品、鉄鋼、一般機械器具では工場数が減る傾向にあり、出版・印刷、電気機械器具の二業種のみが工場数を増やしている。
表-7 工場数
総数食料品衣服・その他の繊維製品木材・木製品家具・装備品パルプ・紙 紙製品出版・印刷同関連品窯業・土石製品鉄鋼金属製品一般機械器具電気機械器具
昭472,46841611312531983312905436421638
 502,52140611713133179388775436119434
 532,67241813412331877508754337821646
 552,57739612111730470496754038620347
 582,3033441049028261522614131117934
 602,1413311118625361477534026816133
 632,4563451139628259588482435220242
平 22,3123261049126456551422033918540
  52,3483291027527551595422533318051
  72,127306986124848545372029915348
 102,6073621526027144648532437417877
 122,3593221284924951571491934515764
札幌市『札幌市統計書』各年
1 総数にはその他を含む。

 次に表8を検討しよう。工場数はこの時期に横這いだったが、製造品出荷額は昭和四十七年を一〇〇とすると平成十二年には二六七となっており、二・七倍化した。もっともこの間の消費者物価上昇率は二六九であったから、物価上昇を差し引いた実質値でみると製造品出荷額は横這いであったといえよう。出荷額合計が名目で二六七に伸びたのに対し、業種別の内訳は、出版・印刷(五一九・五)、電気機械器具(四七五・四)のみが平均を超えて伸びており、他の伸び率は平均以下であった。その結果、業種別のランキングで一位の食料品は、その比率を低下させ、出版・印刷は比率を上昇させたが、この二業種合わせて五〇パーセント強という構造は変わらなかった。
表-8 製造品出荷額(単位:百万円、%)
金額総数食料品衣服・その他の繊維製品木材・木製品家具・装備品パルプ・紙 紙製品出版・印刷同関連品窯業・土石製品鉄鋼金属製品一般機械器具電気機械器具
昭47267,529106,7054,3848,12215,82211,72131,9599,29710,05530,19715,8462,983
 50418,515164,8327,64411,37823,64417,36859,89814,85619,81337,99824,8374,490
 53526,268211,3218,14312,57130,12120,87085,24615,65121,52147,81927,2577,242
 55629,135240,9779,25516,45832,35232,352105,39625,90027,91963,19430,7688,393
 58629,228246,7509,65313,22330,34031,659128,39715,81127,16652,24828,4946,403
 60659,752276,22710,48914,34128,66531,954129,18516,81425,38151,39628,6947,127
 63749,688293,76010,08115,86235,51034,091158,83417,365x72,65330,30811,042
平 2841,252307,52110,31419,86537,22240,180186,12318,493x91,44936,68313,875
  5808,938311,3479,52510,78333,17729,280192,20015,00428,24485,13830,88314,793
  7753,830295,7288,86010,29031,02324,854195,85912,57318,67773,45826,31214,429
 10777,531218,12911,8687,36030,62616,184189,84611,76721,69279,08930,73617,290
 12714,890220,4919,4355,65326,40016,457166,02412,78219,63873,77723,80914,182
比率総数食料品衣服・その他の繊維製品木材・木製品家具・装備品パルプ・紙 紙製品出版・印刷同関連品窯業・土石製品鉄鋼金属製品一般機械器具電気機械器具
昭47100.039.91.63.05.94.411.93.53.811.35.91.1
 50100.039.41.82.75.64.114.33.54.79.15.91.1
 53100.040.21.52.45.74.016.23.04.19.15.21.4
 55100.038.31.52.65.15.116.84.14.410.04.91.3
 58100.039.21.52.14.85.020.42.54.38.34.51.0
 60100.041.91.62.24.34.819.62.53.87.84.31.1
 63100.039.21.32.14.74.521.22.3x9.74.01.5
平 2100.036.61.22.44.44.822.12.2x10.94.41.6
  5100.038.51.21.34.13.623.81.93.510.53.81.8
  7100.039.21.21.44.13.326.01.72.59.73.51.9
 10100.028.11.50.93.92.124.41.52.810.24.02.2
 12100.030.81.30.83.72.323.21.82.710.33.32.0
札幌市『札幌市統計書』各年
1 xはサンプル数過小につき数値非公表。
2 総数にはその他を含む。

 それでは、札幌工業の業種的な特徴は、どうだったのか。昭和五十二年のデータを用いて、北海道の業種分布と札幌の業種分布を比べ「特化係数」(各業種の札幌市における構成比÷各業種の北海道における構成比)を算出した報告書によると、高い順に出版・印刷(四・九三)、衣服等(二・八六)、一般機械器具(二・五八)、家具・装備品(二・三〇)、金属製品(二・二七)という順となる(札幌市、札幌商工会議所 新札幌市工業基本計画 昭55)。表8で高い比率をみせた業種が、札幌に特に発達した業種である。
 札幌市は、札幌の工業の将来展望を切り開くために、現状分析を何回か試みている。重化学工業が少なく軽工業が中心であることに関して
かつてその煙突がその都市のシンボルとして君臨していた重工業工場が、今日、公害発生の元凶として恐れられていることを考えるならば、本市に重工業部門の工場が少ないことは、市民生活のうえからは喜ばしいことであるといえよう
(札幌市経済局商工部工政課 札幌市の工業団地 昭52)。

とメリットを強調し、「大都市人口を背景に、軽工業を主とする工業」を「都市型工業」と規定し、札幌はその典型であるというのである(札幌市経済局商工部工政課 札幌市の工業団地 昭52)。札幌の特徴を「都市型工業」とする考え方は他の報告書でも採用されている(札幌市、札幌商工会議所 新札幌市工業基本計画 昭55)。昭和五十年代という時代は、公害問題に対する関心の高まりによって、軽工業中心の工業発展を是とする考え方がみられたのである。