札幌オリンピック関連工事にともない、札幌の建設業は事業所数、従業者数ともに増加傾向をたどってきた。オリンピック後の状況を表24にまとめてみた。総数の欄をみると、事業所数はオリンピック後も増加を続け、平成八年(一九九六)には昭和四十七年(一九七二)の二・三倍に達している。従業者数は一・四倍にとどまるが、ピーク時には一〇万人を超え、拓銀破綻後にようやく事業所数、従業者数ともに減少に転じているのである。次に従業者数別(企業規模別)の事業所数を最終年の平成十三年についてみると、四人以下が三四・八パーセントと最多階層をなし、次いで五~九人の三〇・九パーセントであり、両者を合わせると六五・七パーセントをしめている。零細規模企業がきわめて多いことが特徴である。さらに、右欄の一事業所当従業者数をみると、時期が下がるにつれて従業者数が減少、すなわち企業規模が小規模化しているのである。平成十三年と昭和四十七年の数値を階層ごとに比べると、小規模の階層ほど事業所数が増加し、大規模の階層ほど事業所数が減少したことがわかる。札幌の建設企業は、全体として小規模化しながら増大したのである。
| 従業者数別事業所数 | 総数 | 1事業所当従業者数 |
4人以下 | 5~9人 | 10~19人 | 20~29人 | 30~49人 | 50~99人 | 100~199人 | 200~299人 | 300人以上 | 事業所数 | 従業者数 |
昭47 | 711 | 884 | 843 | 301 | 269 | 147 | 82 | 25 | 20 | 3,282 | 74,973 | 22.8 |
50 | 743 | 1,211 | 1,160 | 367 | 263 | 216 | 79 | 13 | 18 | 4,070 | 83,262 | 20.5 |
56 | 1,446 | 2,010 | 1,429 | 441 | 310 | 200 | 77 | 24 | 10 | 5,947 | 93,345 | 15.7 |
61 | 1,872 | 2,003 | 1,374 | 437 | 301 | 174 | 71 | 13 | 8 | 6,253 | 87,097 | 13.9 |
平 3 | 2,152 | 2,319 | 1,724 | 544 | 348 | 182 | 69 | 18 | 11 | 7,367 | 101,559 | 13.8 |
8 | 2,230 | 2,379 | 1,742 | 553 | 384 | 204 | 59 | 15 | 13 | 7,579 | 103,819 | 13.7 |
13 | 2,355 | 2,088 | 1,367 | 434 | 306 | 156 | 44 | 11 | 4 | 6,765 | 81,262 | 12.0 |
さて、建設業は、総合工事業、職別工事業、設備工事業の三種に分類される。事業所数では北海道の場合総合工事業が半数近くをしめている(北海道の建設業界、たくぎん調査月報No.406 昭61)ので、本節でも総合工事業を中心にみていくことにした。昭和五十年代はじめに札幌に本社を置く総合工事業主要企業一〇〇社を詳細に調査した本があるので、これを用いて主要一〇〇社のデータ分析を行った。まず、表25は総括表にあたるものである。資本金規模別に大規模グループ(資本金一億円以上)、中規模グループ(資本金三〇〇〇万以上一億円未満)、小規模グループ(資本金三〇〇〇万円未満)に分けることができる。もっとも、従業員数の欄をみると、小規模グループでさえ二三人である。表24によれば従業者数二三人は下から四番目の階層に該当し、五十年の平均従業者数二〇・五人を超えている。札幌の一〇〇社に選ばれた企業は札幌における中以上の企業なのである。ただ、ここでは資本金規模別の三グループを便宜的に大、中、小で表現している。
資本金規模 | 会社数 | 資本金 (万円) | 従業員数 (人) | 完成工事高(千円) | 経常利益(千円) | 官需比率 % |
昭51 | 昭52 | 昭51 | 昭52 | 昭50 | 昭51 | 昭52 |
1億円以上 | 16 | 22,250 | 248 | 6,872,419 | 7,647,334 | 191,728 | 169,851 | 66.3 | 66.5 | 67.4 |
3,000万円以上1億円未満 | 38 | 4,390 | 47 | 1,506,667 | 1,554,527 | 43,849 | 41,713 | 43.3 | 40.0 | 42.2 |
3,000万円未満 | 46 | 1,552 | 23 | 733,337 | 834,422 | 13,048 | 12,693 | 27.9 | 28.7 | 32.3 |
全体(平均) | 100 | 5,942 | 68 | 2,009,455 | 2,198,128 | 53,342 | 48,866 | 39.9 | 39.1 | 41.7 |
札幌の100社編集委員会編『札幌の100社 総合建設業編』昭53 |
大規模グループは小規模グループに対して資本金は一四・三倍、経常利益(昭和五十二年)は一三・四倍だが、従業員数は一〇・八倍、完成工事高(昭和五十二年)は九・二倍である。また、中規模グループも小規模グループに対して資本金は二・八倍、経常利益(昭和五十二年)は三・三倍だが、従業員数は二・〇倍、完成工事高(昭和五十二年)は一・九倍にすぎない。企業規模の格差は利益に強くあらわれているが、仕事量にはあまりあらわれない、換言すれば小規模企業ほど低収益構造になっていることが推測できる。また、官需比率をみると、いずれの年次についても大規模企業ほど官需が多く、小規模企業ほど少ないという結果となっている。ただし、後述するが、この資料では、下請、すなわち他の建設会社から仕事を請け負う場合を民需としているので、
公共事業を下請している場合は民需とみなしている。したがって、小規模ほど官需が少なく民需が多くなっているのは、下請が多いこともその要因となっているのである。