まず、六十三年十二月に樹立された「札幌市農業基本計画」は、計画策定の基本方針、農業の誘導方向、基本計画、農政推進体制の整備の四つの章にわたっている。基本方針については、「本計画は、本市農業が担う新鮮で良質な農畜産物の安定供給、および価格安定の安全弁としての本来の役割のほかに、緑地空間の保全という考え方を基本に、大都市近郊の優位性を活かした都市型農業の確立に向け、その進むべき目標、方向を示し、それを実現するための方策を出来る限り明らかにし、体系化したもの」であること、および平成十七年を目標年次とする第三次札幌市長期総合計画(昭63・12策定)に基づき、これを補完・具体化するものであり、おおむね今後一〇年をめどとして本市農政を推進するための根幹をなすものであることなどが明記されている。
以下に本計画のポイントと考えられる事柄をあげると、第一に、基本方針の中には、従来までの施策ないし事業を体系化した「効率的な生産システムの確立」と、今後新たに取り組むべき課題である、「新たな都市農業への取り組み」という二つの主要課題が設定され、合わせて九つの具体的課題が提示されているが、前者の中では札幌ブランドの確立、水田転換対策および泥炭地帯の有効活用、花きの生産振興が、後者の中では農業公園構想の具体化が注目に値する。
第二に、農業の誘導方向の部分では、地域別農業の誘導方向が設定されたことは画期的であった。すなわち、新川・新琴似、屯田、茨戸耕北、篠路、拓北山口(以上は北区)、拓北大野地・福移・中野、太平・上篠路・丘珠・栄町・東雁来(以上は北区、東区にわたる)、東米里、川下(以上は白石区)、真栄・有明(以上は豊平区、現在は清田区)、滝野、真駒内、常盤・石山・藤野・砥山・豊滝・小金湯・白川(以上は南区)、手稲山口・星置、手稲前田(以上は西区、現在は手稲区)、小別沢(西区)の一五地区の農業の誘導方向が示された。
第三に、基本計画の部分では、部門別計画Ⅰとして農地の保全計画、生産基盤整備計画、農業者と農業組織の育成、農畜産物安定供給計画が、同じくⅡとして園芸振興計画、畜産振興計画、水田農業確立計画が提示された。
その後の農業情勢の変動に対応すべく、平成八年(一九九六)五月、「新札幌市農業基本計画」が樹立された。「都市との調和と市民との多面的な結びつきを柱とした新しい都市型農業の確立」を計画策定の基本方針として、十七年を目標年次とする本計画の最大のポイントは、「都市と農業の共存」を基本理念に掲げたことであった。
都市農業は、多くの公益的機能を有していますが、その一方で、良好な営農環境や担い手の確保など山積する課題に直面しています。これらの課題に対応していくには、農業・農地の公共的機能について、市民の理解と共感を得つつ、さまざまな〝農的〟サービスの提供やニーズに即応した農畜産物の供給とともに、市民に農業の担い手や農地の活用者としての参加を促し、市民と農業が密接に結びついた『都市と農業の共存』を確立していくことが必要です。 |
もう一つ、基本計画の部分では、部門別計画として農地保全計画、担い手育成計画、生産・流通振興計画、交流推進計画が提示されたが、市民と農業の多面的な結びつきを具体化すべき交流推進計画に新味がある。